マシニングセンタカスタマイズ対応の必要性とメーカー紹介 | マシニングセンタ大解剖

マシニングセンタは、高精度な加工が可能な機械ですが、複雑な形状や特殊な材質には対応が難しいことがあります。そこで、カスタマイズ対応により、各メーカーが顧客のニーズに応じた柔軟な設計を提供しています。この記事では、マシニングセンタのカスタマイズ対応の重要性と、代表的なメーカーの特徴をご紹介します。

マシニングセンタによる特殊可能の難しさ

マシニングセンタは、複雑な形状でも高精度かつ安定した加工が可能なため、量産加工において大きな強みを発揮します。しかし、特殊な形状や硬度の高い材質では課題があります。

◇材質の硬度により調整が必要

高硬度材料の加工では、工具の選定と加工条件の調整が極めて重要です。エンドミルの選択では、ネガティブなすくい角や刃先のネガランド処理など、刃先強度を高める特徴を持つものが適しています。

また、切削速度と送り速度を高めつつ、切り込み量を少なくする高速ミーリング法が効果的です。加工条件の設定は、素材の特性に応じて細かく調整する必要があります。特に複雑な形状の加工では、粗加工から仕上げまでの各工程で適切な工具を使い分け、表面品質を段階的に向上させる技術が求められます。

◇加工が困難な形状

マシニングセンタによる加工で特に難しいのが「アンダーカット形状」です。これは、一方向から見て陰になる部分があり、通常のエンドミルでは直接アクセスできない形状を指します。

例えば、字型の内側の側面に貫通していないポケット形状がある場合、切削加工では対応が困難です。このような形状に対処するには、いくつかの方法があります。加工工程を追加する、形状を変更する、または部品を分割するなどの工夫が必要です。

例えば、アンダーカット形状を外側まで貫通させたり、上下方向に貫通させたりすることで、エンドミルでの加工を可能にする方法があります。また、Tスロットカッターなどの特殊工具を使用することで、一部のアンダーカット形状を加工できる場合もあります。

ただし、これらの方法を適用するには、熟練した技術者の判断と高度な加工計画が不可欠です。形状の特性を見極め、最適な加工方法を選択することが、高品質な製品を生み出すための鍵となります。

カスタマイズ対応のマシニングセンタで生産効率向上

画像出典：DMG MORI

カスタマイズ対応のマシニングセンタは、特定のニーズに合わせた設計により生産性と品質の向上を実現します。作業の最適化や効率化、高精度加工が可能となり、競争力強化に貢献します。

◇生産性・品質の向上

カスタマイズ対応のマシニングセンタは、特定の加工要件に合わせて設計されるため、生産性と品質の両面で大きな利点があります。オーダーメイドの設計により、加工工程に特化した機械構造が実現し、不要な機能を省くことで段取り時間や加工時間を大幅に削減できます。

これにより、従来の汎用機では困難だった高効率な生産ラインの構築が可能となります。また、特化した機械構造によって加工精度が向上し、高品質な製品の安定した生産が実現します。

これらの特長により、生産能力の向上やコスト削減が達成され、長期的な競争力強化にも寄与します。

◇作業の最適化

カスタマイズ対応のマシニングセンタは、作業内容や現場環境に合わせた設計が可能で、過剰な機能を省いた効率的な運用を実現できます。これにより、無駄を削減しながら必要な機能に特化した最適な作業環境を提供することができます。

専用設計により、高度な加工や搬送、組付作業の自動化が可能となり、作業の効率化と安全性の向上が期待できます。さらに、現場のスペースや作業フローに適応した設計が可能なため、限られた作業スペースを有効活用し、作業効率を最大化できます。

例えば、適切な切削条件の設定により、加工時間を約50%短縮できた事例もあります。このように、作業の最適化を追求することで、生産現場全体のパフォーマンスを大きく向上させることが可能です。また、周辺機器の活用も効率化に重要で、切削液の供給装置やチップ処理装置の導入により、さらなる生産性向上が実現が期待できます。

カスタマイズ可能なマシニングセンタ

画像出典：新日本工機株式会社

カスタマイズ可能なマシニングセンタは、様々な産業分野でのニーズに応えるために設計されており、特定の加工要求に最適化された柔軟性が特徴です。このような設備は、オンリーワンの加工ソリューションを提供し、効率的な生産を実現します。

◇DMG森精機（CMX Vシリーズ）

DMG森精機の「CMX Vシリーズ」は、多様な業種や生産現場に対応する高性能な立形マシニングセンタです。このシリーズの最大の特徴は、全290種類にも及ぶ豊富なオプションが用意されており、顧客の多岐にわたるニーズに応じて柔軟にカスタマイズできる点です。

特に「CMX 800 V」は、X軸移動量800mmという大きな作業エリアを持ちながら、省スペース設計を実現しており、大型ワークにも対応可能です。このシリーズは、日本の伊賀、米国のDavis、中国の天津、ポーランドのFAMOTといった世界4拠点で生産されており、各地域の自動車、産業機械、電気・通信分野のメーカーを中心に幅広く展開されています。

加工精度や生産効率の向上を実現するだけでなく、多様な業界の生産現場で活躍する信頼性の高いソリューションベースマシンとして、多くの支持を集めています。

◇新日本工機株式会社（HF-MⅡ）

新日本工機株式会社の「HF-MⅡ」は、圧倒的なパワーと多彩なカスタマイズ性を誇る大型・超大型の重切削加工機です。このマシンは、舶用エンジンや大型プラント向けワークなどの巨大な加工物に対応し、重厚長大産業をはじめとする幅広い分野で活躍しています。

最新モデルでは切削能力や生産性が大幅に向上し、省エネ設計も実現しました。X/Y軸にはリニアガイドを採用し、高速化を図る一方で、Z/W軸にはツインボールねじ駆動を搭載しています。これにより動的精度や応答性が飛躍的に向上します。

また、オプションで提供される強力な5軸アタッチメントにより、従来の5面加工機では困難だった複雑な加工も可能となり、高トルク旋回軸を駆使した強力切削を実現します。これらの特長により、大型ワークでも高効率かつ高精度な加工が可能となります。

ニーズに合わせたカスタマイズ対応が可能なメーカー

ニーズに合わせたカスタマイズ対応が可能なメーカーは、各分野で高い技術力と柔軟な対応力を持ち、顧客の要望に応じたオーダーメイド機械やソリューションを提供しています。これにより、多様なニーズに応えることができ、業界の発展に寄与しています。

◇株式会社イワシタ

株式会社イワシタは、金属加工機械の設計・製造を行う企業で、長年の実績を誇ります。2代目社長のもとでフライス盤から長尺アルミサッシ加工機への転換を図り、オーダーメイド加工機の製造を開始しました。

この取り組みにより、顧客の多様な加工ニーズに柔軟に対応できる体制が整いました。3代目社長は品質管理の強化とISO9001の取得を進め、製品の安定供給を実現しています。

現在、アルミ長尺材加工機や特殊工作機械、専用機など、顧客のニーズに応じたカスタマイズやオーダーメイドNC加工機を中心に製造しています。航空機、建築、鉄道、自動車、環境エネルギーなど、多様な分野での納入実績を通じて業界の発展に貢献しており、高いリピート率を誇っています。

◇紀和マシナリー

紀和マシナリーは明治2年から創業し、国内外から寄せられる機械加工の要望に迅速かつ柔軟に対応する体制を整えています。世界各地にサービス拠点を設け、アメリカやタイ、中国などで迅速な支援体制を確立しました。

ユーザーの「思い」に寄り添い、1台からでも最適なカスタマイズが可能であり、標準機を基にした低価格での提供が実現されています。

生産性や収益性向上に寄与するため、多様な機械加工ニーズに応える柔軟な製品を提供しており、常に革新と挑戦を続ける企業です。紀和マシナリーは変化する時代に対応しながら、日本国内外のものづくりに貢献し続けています。

◇サワイリエンジニアリング

サワイリエンジニアリングは、お客様の「欲しい」を実現するオーダーメイドNC加工機のメーカーです。フライス系工作機械からマシニングセンタまで幅広い製品群を取り扱い、アルミサッシや木型、板材、樹脂など多様なNC工作機械を提供しています。

IoT技術を取り入れたオーダーメイド機やロボット導入による効率化も実現し、顧客が求める機能を搭載した機械作りに挑戦しています。

このように、それぞれの企業は異なる分野で高い技術力と柔軟性を持ち、多様なニーズに応えるカスタマイズ対応が可能です。これらの企業は顧客満足度向上と業界全体の発展を目指し続けています。

マシニングセンタは、高精度かつ安定した加工が可能なため、複雑な形状や硬度の高い材質にも対応できますが、特殊な条件やアンダーカット形状の加工には課題があります。これに対して、カスタマイズ対応のマシニングセンタは、特定のニーズに応じた設計により、加工精度の向上、生産性の向上、効率的な作業環境を実現します。

各メーカーは、顧客の多様な要求に応じてオーダーメイド機械やソリューションを提供し、業界の発展に寄与しています。例えば、DMG森精機や新日本工機は、広範なオプションと高いカスタマイズ性を持ち、生産ラインの最適化や高品質製品の安定供給を実現しています。

また、株式会社イワシタ、紀和マシナリー、サワイリエンジニアリングなどの企業も、異なる分野でニーズに応じた柔軟な対応を行い、業界全体の革新と発展を支えています。