マシニングセンタの精度を左右する要因と精度向上に成功した事例 | マシニングセンタ大解剖
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マシニングセンタの精度を左右する要因と精度向上に成功した事例
公開:2024.06.28 更新:2024.06.28マシニングセンタは、高精度な加工が可能な工作機械として広く利用されていますが、その精度を左右する要因は様々です。マシニングセンタの精度を最大限に引き出すためには、事前準備やメンテナンス、加工方法の選択など、様々な要素を考慮する必要があります。
こちらでは、マシニングセンタの精度を左右する要因について詳しく解説し、実際に精度向上に成功した事例をご紹介します。
目次
加工精度とは?マシニングセンタの精度について
加工精度は製造業において重要な概念です。これは、加工された部品や製品が設計通りの寸法や形状精度、表面仕上げ、角度・傾斜の精度をどれだけ正確に再現できるかを示す指標です。特にマシニングセンタの場合、CADやCAMで設計した通りに動作し、高精度な加工を実現します。
◇ 加工精度とは
加工精度とは、加工後の製品が設計図通りに作られているかどうかを表す尺度です。具体的には、寸法精度、形状精度、表面仕上げ、角度・傾斜精度などの精度をさします。
切削加工における加工精度は、部品や製品の正確な寸法や形状を保つために極めて重要です。加工精度が低いと、設計通りの性能や機能が発揮されず、製品の品質や信頼性が低下する可能性があります。
寸法精度や形状精度、表面仕上げ、角度・傾斜の精度は、設計図面で指定された寸法公差や許容差内で加工されることが基本です。一般的に、公差は「±Xmm」または「±Xμm」で表され、たとえば「±0.05mm」は、加工された部品の寸法が設計から±0.05mmの範囲内で許容されることを意味します。
◇ マシニングセンタの精度
マシニングセンタは、その高い加工精度によって多くの製造現場で重宝されています。CADやCAMで作成した設計通りに動作するため、高精度な加工が可能です。これにより、従業員の技術力に左右されずに一貫して品質の高い製品が生産できます。
また、個体差が小さく安定した品質を保つことができ、品質の安定化とともに手直しの手間も大幅に削減できます。これにより、付加価値の高い業務に集中できるだけでなく、労力を低減してプログラム作成などの作業に注力することが可能です。
マシニングセンタの精度を上げる為に大切なこと
画像出典:フォトAC
マシニングセンタは、高い精度で加工できる汎用性の高い工作機械です。しかし、精度を最大限に引き出すためには、適切な設定やメンテナンス、加工方法の選択など、様々な要素を考慮する必要があります。
◇ 事前準備
マシニングセンタで作品の精度を高めるためには、事前準備が不可欠です。まず、マシンの状態を整えることが重要です。定期的なマシンの掃除や部品交換を行うことで、正確な作業が可能になります。特に切削工具の定期チェックは欠かせません。
また、加工前の金属材料を正確な寸法に加工し、材質や要求精度に応じた切削工具や加工治具を選定することも重要です。さらに、切削条件の設定(切削速度、送り速度、切削深さ、切削方向)を適切に行うことで、精度を確保し、工具の寿命も延ばすことができます。
◇ 工具のメンテナンス
高品質な工具を選ぶことは基本ですが、それだけでは十分ではありません。定期的なメンテナンスを行うことで、工具の摩耗や欠陥を最小限に抑えることができます。具体的には、定期的な清掃やオイルやグリスの交換を行い、切削工具の寿命を延ばします。また、必要に応じて研削や研磨を行い、切れ味を保つことも重要です。
◇ 適切なプログラムの作成
適切なCAD/CAMプログラムの作成も重要です。CAD(Computer Aided Design)で設計された図面を元に、CAM(Computer Aided Manufacturing)ソフトウェアが加工プログラムを生成し、マシンがその通りに動作します。
ソフトウェアが加工現場のニーズに適合し、使いやすいインターフェースを持つかどうか、サポート体制がしっかりしているかなどを考慮する必要があります。適切なソフトウェアの導入は、加工の品質向上に直結し、生産性を高めるための重要なステップです。
確認不足や工具の不良により精度不足となる場合も
製造業において、工具の不良やメンテナンス不足は、製品の品質に直接影響を及ぼす重要な問題です。これらの問題が原因で、製品の精度が低下し、最終的には顧客の信頼を失うことにも繋がりかねません。
ここでは、工具の不良とメンテナンス不足がどのように精度不足を引き起こすのか、具体的な例を挙げて解説します。
◇工具の不良による精度不足
バイスは、工作機械において材料を固定するために使用される工具です。バイスの精度が不十分であると、加工される材料が適切に固定されず、結果として加工誤差が生じる可能性があります。
例えば、バイスの口が平行でない場合や、摩耗によってガタが生じている場合などが挙げられます。これらの問題は、加工中に材料が動いてしまい、寸法や形状が設計通りにならない原因となります。
◇メンテナンス不足
テーブル軸線が理想的にはY軸と平行であるべきですが、実際にはX軸周りやZ軸周りにわずかな傾きが生じることがあります。この傾きが大きくなると、加工精度に問題が生じる可能性があります。
実際の事例では、立形マシニングセンターのテーブル上面が0.2ミリも傾いていることが判明しました。この傾きは、メンテナンス不足により水平器での定期的な確認が怠られていたことに起因しています。
このような事例からも、マシンの精度維持において定期的なメンテナンスが重要であることが分かります。
5軸制御立形マシニングセンタの導入で精度向上に成功した事例
製造業においては、高精度な部品の製作がますます求められています。従来の3軸制御マシニングセンタでは加工が難しかった複雑な形状や、高精度な部品の製作には、5軸制御立形マシニングセンタが有効です。
今回ご紹介する事例は、5軸制御立形マシニングセンタ導入によって、加工精度を大幅に向上させた企業の成功事例です。
◇ 導入の経緯
研究開発において、高精度な部品の製作が求められる場面で、従来の3軸制御の立形マシニングセンタでは以下のような課題がありました。まず、難削材や高精度部品の短納期納入が困難であり、試作品の製作に時間がかかることが多かったです。
また、部品形状に応じた段取り替え治具の製作にも時間がかかり、生産性の向上が制限されていました。さらに、厳しい表面粗さ要求に対応するためには、2段階方式での仕上げ加工が必要であり、これが加工時間とコストを増加させる要因となっていました。
このような課題を解決するために、5軸制御立形マシニングセンタの導入が決定されました。5軸制御マシンは、複雑な形状や多角度からの加工が可能であり、特に高精度部品の製作に適しています。
◇ 時間短縮と精度向上を実現
5軸制御立形マシニングセンタの導入により、段取り替えや治具製作の負担が大幅に軽減されました。特に、5軸制御による多角度からの自在な加工が可能になったことで、ワンチャッキングで複雑な部品の大部分を1台で加工できるようになりました。
また、5軸加工機の「ファイブチューニング」機能により、朝一での調整で幾何段差や芯ずれを自動補正し、1回の調整で段差のない高精度な加工が実現できるようになりました。
これにより、製造プロセス全体の効率が向上し、納期の短縮や品質の向上に大きく貢献しています。
加工精度は製造業において至上の重要性を持ちます。加工精度には寸法精度、形状精度、表面仕上げ、角度・傾斜精度などが含まれ、これらが公差内で達成されることが基本です。
マシニングセンタはCAD/CAMにより設計通りに動作し、高精度な加工を実現します。これにより品質の一貫性が確保され、手直しの必要性が低減されます。しかし、精度を最大化するには適切な設定、定期的なメンテナンス、適切な切削条件の設定が不可欠です。
工具の不良やメンテナンス不足は加工精度に直結し、正確な加工を妨げる要因となりますので、定期的な管理が欠かせません。5軸制御立形マシニングセンタの導入事例では、複雑な形状や高精度部品の製作が効率的に行われ、生産性と品質の両面で大きな改善が見られました。
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