増加する自動化へのニーズとマシニングセンタの長時間自動化実現を阻む要因 | マシニングセンタ大解剖
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増加する自動化へのニーズとマシニングセンタの長時間自動化実現を阻む要因
公開:2024.09.18 更新:2024.09.18製造業界では労働力不足や生産性向上の必要性から、自動化へのニーズが急速に増加しています。特にマシニングセンタなどの工作機械に対する自動化の要求は高まり、24時間の無人運転や生産効率の最大化が求められています。しかし、長時間の自動化には技術的な課題も多く、ツールの交換や機械の不具合、段取り替えの複雑さが障壁となっています。
目次
高まる自動化へのニーズと様々な実現方法
近年、製造業界では自動化の導入が急速に進んでおり、特に工作機械に対する需要が年々高まっています。これは、労働力不足やコスト削減、生産性の向上といった課題に対処するために、効率的な生産プロセスを構築する必要があるからです。
◇工作機械で求められる自動化
現在、工作機械業界では人手不足が深刻な問題となっており、特に熟練工の減少が顕著です。高齢化が進む中、技術を持つ労働者の確保が難しくなっているため、企業は自動化による対応を迫られています。
自動化は、労働力に依存せず、安定した生産を継続するための重要な手段です。さらに、顧客の多様化するニーズに応え、短納期や高品質を維持するためには、効率的な製造体制が欠かせません。
特に、24時間の無人運転を可能とする自動化は、コスト削減と生産能力の向上を同時に実現できる手段として、多くの企業から注目されています。
◇自動化のさまざまな実現方法
工作機械の自動化を実現する最も一般的なアプローチは、工作機械そのものの機能を高度化することに加え、周辺機器との連携です。例えば、ターニングセンタ(NC旋盤)やマシニングセンタに自動搬送システムやロボットを組み合わせることで、完全自動の生産ラインを構築できます。
これらの自動化システムは、多品種少量生産にも柔軟に対応できる点が大きな利点です。プログラミングにより異なる製品への短時間での切り替えが可能となり、生産の柔軟性が大幅に向上します。これにより、顧客の需要に迅速に応え、品質を維持しながら生産効率を向上させることで、企業の競争力強化にもつながります。
マシニングセンタの長時間自動化を阻む要因
マシニングセンタの自動化は、生産効率を大幅に向上させる一方で、いくつかの技術的課題も伴います。特に、ツールの交換やシステムのセットアップ、機械の不具合が課題となり、これらの要因が長時間の自動化を難しくすることがあります。
◇長期間連続稼働の難しさ
マシニングセンタを長時間稼働させるためには、機械が途中で停止するリスクを排除しなければなりません。夜間など作業者が常駐しない時間帯での連続稼働を目指す場合、予期せぬトラブルや故障が発生すると、機械が停止し、生産が中断する可能性があります。
特に、工具の摩耗や破損、冷却材の不足、チップ詰まり、部品の過熱などが原因で作業が中断することがあります。これらの問題を解決しない限り、長期間の無人運転や夜間の自動化は難しいといえるでしょう。
◇段取り替え時の難しさ
もうひとつの大きな課題は、加工品が変わるたびに必要となる段取り替えです。異なる製品を加工する際には、ツールのレイアウトや治具の設定を変更する必要があり、この作業は自動化が難しいとされています。
特に、多品種少量生産では段取り替えの頻度が高く、加工内容に合わせたツール交換やプログラムの再設定が必要です。そのため、長時間の連続稼働を実現することが困難になります。
一部の工作機では治具交換も自動化できるシステムがありますが、その導入コストや複雑さが課題です。段取り替えの効率化や自動化は、長時間の自動化における大きな障壁となっています。
松浦機械製作所が自動化に取り組む理由
画像出典:松浦機械製作所
松浦機械製作所は、高精度・高機能なマシニングセンタを製造・販売する日本の工作機械メーカーです。精密加工分野に特化した機械の開発で知られ、5軸制御マシニングセンタ、複合加工機、産業用自動化システムなどで高い評価を得ています。
◇モノづくりと真摯に向き合う松浦機械製作所
松浦機械製作所は、「独創的なモノづくり」に対する深い情熱と誠実な姿勢で業界の信頼を築いてきました。しかし、製造業は急速に変化しており、競争の激化や技術革新のスピードが増しています。
このような状況下、松浦機械製作所は自動化の導入を進めることで競争力強化を図っています。同社において、自動化は単なるトレンドではなく、持続可能な成長のための必然的な選択として位置づけられているのです。
◇DX(デジタルトランスフォーメーション)への想い
松浦機械製作所の自動化推進は、DXへの積極的な取り組みと密接に関連しています。伝統的な製造方式に固執すると、技術革新や市場の変化に対応できず、競争優位性を失うリスクが高まります。さらに、生産人口の減少も課題となっており、労働力の確保や効率的な生産体制の構築が急務です。
自動化の導入は、製造プロセス全体のデータ管理やリアルタイムでの分析・最適化の促進と、DXによる高い精度と柔軟な生産体制の実現に不可欠です。松浦機械製作所では、自動化によるDXの推進により、イノベーティブなソリューションと、未来の製造業に対応するサービスを提供し続けることを目指しています。
◇シンプルオートメーション
松浦機械製作所の「シンプルオートメーション」は、横型および5軸マシニングセンタ用の自動化システムです。このシステムにより、生産現場の効率性が向上し(1日あたり20時間、1カ月あたり600時間稼働)、オペレーターの手作業を減らすことで全体の生産性が大幅に改善されます。
「シンプルオートメーション」は特に中小規模の製造業者に適しており、簡単に導入できる設計が特徴です。既存設備への統合も容易で、迅速に効果を発揮します。
シンプルオートメーションを実現したマシニングセンタ
シンプルオートメーションを導入した「MA-420」は、松浦機械製作所を代表する5軸制御立形マシニングセンタです。以下では、MA-420の主な特徴を説明します。
◇多彩な自動化オプションで自動化システムを実現
MA-420は、さまざまな自動化オプションが選べるのが大きな特徴です。例えば、ロボットシステムとの連携による自動化を実現する「ロボットインターフェース」、作業中に扉を自動で開閉できる「OPオートドア」、ロボットによる部品の効率的な交換を可能にする「フロアパレットシステム」などの豊富なオプションにより、全体の作業効率が向上します。
◇高精度な加工と操作性の良さ
MA-420は、温度や工具の摩耗による加工精度のズレを自動で補正する機能が搭載されています。具体的には、主軸やボールねじ、ベッドの温度を監視し、そのデータをもとに精度のズレを補正する「熱変位補正機能」や、5軸加工機の誤差をわずか3分で測定・修正する5軸誤差計測機能「eZ-5」などです。
操作性も優れており、大画面での操作が可能なため、経験の少ない作業者でも高精度な加工を実現できます。
◇従来品より大きなワークサイズに対応
MMA-420の最大ワークサイズは径420mm、高さ300mmで、従来モデルよりも径が110mm大きくなっています。機械の作業スペースが広がったことで、大型ワークや多様な部品の加工が可能です。
さらに、切屑処理システムも強化されており、作業中に発生する金属屑をスムーズに排出できるため、機械を止めずに長時間運転できる点も特徴です。
近年、製造業界では労働力不足や生産性向上のため、自動化の導入が急速に進んでいます。特に工作機械業界では熟練工の減少が深刻であり、24時間の無人運転など、自動化が求められています。
自動化は生産の効率性や柔軟性を向上させる一方、ツールの交換や段取り替えの難しさ、機械の不具合といった課題もあります。松浦機械製作所は、高精度なマシニングセンタの製造と自動化に取り組み、独自の「シンプルオートメーション」システムを導入しました。
このシステムは中小製造業に適しており、MA-420のような5軸制御マシニングセンタで多彩な自動化オプションを提供。温度補正機能や大画面操作で高精度加工を実現し、大型ワークの対応や切屑処理強化など、長時間の連続運転を可能にしています。
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