複合加工機とマシニングセンタとの違いは?種類と選ぶ際のポイント | マシニングセンタ大解剖
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複合加工機とマシニングセンタとの違いは?種類と選ぶ際のポイント
公開:2024.11.20 更新:2024.11.20製造現場でよく使われる複合加工機とマシニングセンタは、どちらも高度な加工精度を提供する重要な機械ですが、機能や用途において大きな違いがあります。複合加工機は、旋削やフライス加工など複数の加工を一台で行うことができ、効率的で精密な製造を可能にします。
一方、マシニングセンタは主に穴あけや平面削りに特化しており、複雑な形状の加工には向いています。これらの機械を選ぶ際は、加工する製品の特性や生産工程の複雑さを理解し、最適な機械を選ぶことが重要です。
目次
複合加工機とは?マシニングセンタとの違い
製造現場で使用される加工機器には、さまざまな種類があります。その中でも「複合加工機」と「マシニングセンタ」は、特に広く活用されている代表的な機械です。一見すると似ているように感じられるこれらの機器ですが、それぞれに独自の特徴や役割があり、用途に応じて使い分けられています。
◇複合加工機とは
複合加工機は、1台で旋削やフライス加工など複数の加工を行える工作機械です。従来、旋盤やマシニングセンタなど異なる機械を用いて行っていた加工工程を、一台で完結できるのが最大の特徴です。
複雑な形状を持つ部品でも、ワークを機械から取り外すことなく加工を続けられるため、精度の維持が容易であり、作業時間の短縮ができます。この機械は、特に航空宇宙産業や自動車部品の製造で活躍しており、精密さと効率が求められる現場に欠かせない存在です。
例えば、エンジン部品やタービンブレードのような複雑な形状を持つ部品の製造には、多工程を短時間で行える複合加工機が最適です。
◇マシニングセンタとの違い
マシニングセンタと複合加工機は、どちらも自動化された工作機械ですが、機能面で大きな違いがあります。
マシニングセンタは、切削工具を自動で交換しながら加工を進める機械で、主に穴あけや平面削りといった加工に特化しています。フライス盤をベースに進化しており、工具を回転させながら被加工物に加工を施すのが特徴です。近年では工具軸を自由に動かせる5軸制御のモデルも普及しており、複雑な形状の加工も可能です。
一方、複合加工機はNC旋盤を基に発展したもので、被加工物を回転させながら複数の加工を行う機能を持っています。フライス削りや旋削、さらには研削まで、1台で複数の工程をこなせるため、ワーク(加工物)の取り換えが不要で非常に効率的です。
例えば、通常は旋盤で形を整え、マシニングセンタで追加の加工を行う場合でも、複合加工機であれば一度のセットアップで全て完了します。このため、複合加工機は多工程を一貫して処理する能力が求められる現場で特に活躍します。
複合加工機の用途と種類
複合加工機は、多工程を一台で行える高機能な工作機械であり、効率化や高精度加工が求められる製造現場で広く活用されています。
◇複合加工機の用途
複合加工機は、旋削やフライス加工、穴あけ、タッピングなど、複数の加工を一台で行えるため、複雑な形状の部品加工に最適です。特に、航空機や自動車のエンジン部品、タービンブレード、医療機器など、精密さが求められる製品の製造に多く用いられています。
複合加工機の利点は、工程間でワークを再装着する必要がないため、位置ずれや加工誤差が発生しにくい点です。また、段取り時間の短縮により、作業効率が向上します。例えば、航空宇宙分野では、複雑な形状を持つ部品を短時間で精密に加工する必要があり、複合加工機がその課題に応える役割を果たしています。
さらに、少量多品種生産が求められる製造現場でも活躍しています。柔軟なプログラム変更が可能であるため、製品の仕様変更に迅速に対応できる点が複合加工機を利用するメリットです。
◇複合加工機の種類
画像出典:中村留精密工業株式会社
複合加工機には、用途や構造に応じたいくつかの種類があります。
ターニングセンターベース
このタイプは旋削加工を中心に設計されており、回転するワーク(被加工物)に対して工具を移動させる構造が特徴です。重切削にも対応できる剛性の高い設計がなされており、大型部品の加工や高精度が求められる旋削加工に適しています。特に自動車や重機部品の製造で活用されることが多いです。
マシニングセンターベース
フライス加工や穴あけを得意とするマシニングセンタをベースにしたタイプです。回転工具を使って複雑な形状を加工できるため、航空機部品や金型製作など精密な加工が必要な場面に適しています。また、工具交換機能を備えたモデルが多く、一度のセットアップで多種類の加工が可能です。
小型複合加工機
省スペースで設置できる小型の複合加工機は、小型部品の加工に特化しています。特に医療機器や電子機器の部品製造といった、精密な加工が求められる分野で活躍します。操作性が高く、少量多品種生産にも対応しており、中小規模の工場での利用が進んでいます。
これらの複合加工機は、それぞれ得意とする分野が異なるため、加工する部品の種類や製造現場のニーズに応じて選択することが重要です。
複合加工機のメリット
複合加工機は、旋削やフライス加工など複数の加工を一台で行えるため、製造現場の効率化と精度向上に貢献する重要な工作機械です。複合加工機を導入することで得られる主要なメリットは3つあります。
◇生産性の向上
複合加工機の最大のメリットの一つは、生産性の大幅な向上です。従来、旋盤やフライス盤など複数の機械を使用して行っていた工程を一台で完結できるため、加工の段取り作業が大幅に削減されます。
また、ワークを機械から取り外して再度セットする必要がないため、位置ずれや工程間のロスを防ぎ、連続した加工が可能です。さらに、工具交換や工程間の移動が不要になることで、加工にかかる時間を短縮できます。
例えば、自動車部品や航空機部品など、多工程を必要とする複雑な製品の製造では、複合加工機の導入により作業効率が劇的に向上します。作業効率化により、大量生産だけでなく、少量多品種生産にも柔軟に対応できるのが大きな強みです。
◇コスト削減
複合加工機の導入は、設備投資や運用コストの削減にも寄与します。従来、複数の機械を使用していた場合、それぞれの機械の設置スペースや維持費用が必要でしたが、複合加工機は一台でそれを補うことができます。
また、機械間のワーク移動が不要になることで、人員の配置も最適化され、労働コストの削減が可能です。さらに、加工時間の短縮によって稼働率が向上し、一台あたりの生産性が高まることで、製造原価を抑える効果も期待できます。
加えて、複合加工機の一括管理により、メンテナンスコストやエネルギー消費も削減されるため、全体的な運用コストの低減が実現します。
◇精度・品質の向上
複合加工機のもう一つの大きな利点は、加工精度と品質の向上です。複数の工程を同一の機械内で行えるため、従来のようにワークを取り外して再装着する際の位置ずれや誤差が発生しません。
同一の機械内で複数の工程を行うことが、高精度な加工を実現するポイントです。また、複合加工機は高剛性の構造を持つものが多く、加工時の振動を最小限に抑えることが可能です。
これにより、表面仕上げの品質が向上し、精密さが求められる製品でも安定した結果を得ることができます。航空宇宙産業や医療機器のように、厳しい品質基準が求められる分野では、複合加工機の性能が非常に重宝されています。
マシニングセンタと複合加工機で迷ったら?
マシニングセンタと複合加工機のどちらを選ぶべきか迷った際には、それぞれの強みを理解し、加工内容に適した機械を選ぶことが重要です。
◇マシニングセンタの強み
マシニングセンタは、フライス加工や穴あけ加工など、高精度で多様な切削加工を得意とする工作機械です。特に、平面加工や複雑な穴加工において、高い加工精度と効率性を発揮します。
また、多軸加工機能を備えた機種では、3次元形状の加工が可能であり、航空宇宙産業や精密部品製造に適しています。さらに、工具交換装置が搭載されているため、一度のセットアップで複数の加工を連続して行える点も特徴です。連続して加工が行えるため、段取りの手間が減り、加工時間の短縮ができます。
◇加工に適した工作機械の選択が重要
どちらの機械を選ぶべきかは、加工する製品の特性や生産工程の複雑さによります。例えば、マシニングセンタは、切削や穴あけ加工を主体とする場合や、高精度な仕上げを求められる製品に向いています。
一方で、複合加工機は、旋削とフライス加工を一台で完結させたい場合や、複数工程を一貫して行いたい場合に最適です。ターニングセンタとしての複合加工機は、特に大型部品の旋削加工を含む複雑な工程に対応できる点で優れています。
例えば、自動車のエンジン部品や油圧機器の製造など、加工精度だけでなく工程の集約が求められる製品に適しています。また、複雑な形状のワークを加工する場合には、複合加工機の方が段取り替えの手間を省けるため、作業効率が向上します。
一方で、単純な加工を大量に行う場合や、特定の工程に特化した機械を複数台稼働させる方がコスト効率が高い場合には、マシニングセンタが選ばれることが多いです。
複合加工機とマシニングセンタは、いずれも製造現場で活用される重要な機械ですが、その特長は異なります。複合加工機は、旋削やフライス加工を一台で行えるため、作業効率が大幅に向上し、精度の高い加工が可能です。
特に航空機や自動車部品、医療機器など、高精度が求められる製造に最適です。マシニングセンタは、主に穴あけや平面削りに特化し、複雑な形状の加工にも対応できるものの、複数の機械を使い分ける必要があります。
複合加工機は、ワークの取り換えを不要にし、工程を一貫して行うため、特に多工程を一度に処理したい場合に有効です。選択の際は、製品の特性や加工工程の複雑さを考慮し、それぞれの機械の強みを活かすことが重要です。
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