切削加工による鏡面加工の利点と中田製作所の挑戦 | マシニングセンタ大解剖
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切削加工による鏡面加工の利点と中田製作所の挑戦
公開:2024.07.25 更新:2024.07.25切削加工による鏡面加工は、高精度で滑らかな表面仕上げを実現するための画期的な技術です。従来の研磨工程を省略できるため、時間とコストの大幅な削減が可能です。中田製作所は、この分野で独自の技術を開発し、世界で唯一の無痕鏡面加工技術を実現しました。
この技術は、不純物の混入がなく、高い面粗度と平面度を実現するため、半導体製造装置や液晶製造装置メーカーから高い評価を受けています。
目次
鏡面仕上げの2つの処理方法
鏡面仕上げは、製品表面を滑らかで光沢のある状態に仕上げるための重要な加工技術です。鏡面仕上げを施すことで、製品の性能が向上し、美しさが引き立つため、多くの業界で重要視されています。ここでは、鏡面仕上げの概要と、その具体的な処理方法である「鏡面研磨」と「鏡面加工」の2つについて詳しく解説します。
◇鏡面仕上げとは
鏡面仕上げとは、加工された表面を鏡のように滑らかで光沢のある状態に仕上げることです。この仕上げは、光学機器や装飾品、自動車部品など、高い精度と美観が求められる製品に使用されます。鏡面仕上げを施すことで、製品の性能を向上させ、美しさを引き立てることができます。
◇鏡面仕上げの2つの処理方法
鏡面仕上げには主に「鏡面研磨」と「鏡面加工」の2つの処理方法があります。それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。
鏡面研磨
鏡面研磨は、研磨剤を使用して表面を磨く方法です。研磨剤にはダイヤモンドペーストや酸化アルミニウムが使用され、これを研磨布やホイールに付けて磨くことで、表面の微細な凹凸を取り除きます。
鏡面加工
鏡面加工は、加工のみで直接表面を滑らかに仕上げる方法です。鏡面加工には、切削加工と研削加工の2種類があります。切削加工では、超硬工具やダイヤモンド工具を使用して表面を滑らかに仕上げます。この方法は主にマシニングセンタなどの高精度な数値制御機械で行われます。
研削加工では、非常に細かい砥石やホイールを使用して表面を磨きます。この方法は、硬い材料や複雑な形状の部品に対しても効果的で、切削加工以上に高い精度が求められる場合に使用されます。
鏡面加工のメリットと超精密切削加工
画像出典:中田製作所
鏡面加工により製品の外観が美しくなるだけでなく、耐摩耗性や耐腐食性も向上します。また、表面が滑らかであるため、摩擦が減少し、製品の性能が向上します。このような高品質な仕上がりを実現するためには、超精密切削加工が欠かせません。
◇鏡面加工のメリット
鏡面加工は研磨を行わなくてもナノスケールの滑らかな表面が得られるため、費用的にも時間的にも効率的です。一方、従来の鏡面研磨は、切削や研削で形状を整えた後に研磨を行う仕上げ工程が必要です。
この追加工程により、時間とコストがかかります。鏡面加工は、この研磨工程を省略できるため、総合的なコストダウンに繋がるのです。つまり、鏡面加工は高精度な表面仕上げを効率的に実現する技術であり、製造プロセスの合理化とコスト削減に大きなメリットをもたらします。
◇ナノレベルの精度を実現する超精密切削加工
超精密切削加工は、非常に高い精度でナノメートル単位の仕上げを実現する技術です。以下に、切削加工とその精密バージョンである超精密切削加工について説明します。
切削加工
切削加工は、工具を使用して材料を削り取ることで形状や寸法を整える方法です。通常の切削加工は金属やプラスチックなどの素材に対して行われ、要求される精度に応じた仕上げが施されます。
超精密切削加工
超精密切削加工は、通常の切削加工よりもはるかに高い精度で加工を実現する技術です。この方法では、超硬工具やダイヤモンド工具を用いてナノメートル単位の精度を達成します。数値制御機械を使用し、高い精度と再現性を保ちながら極めて高品質な仕上げを可能にします。
きっかけは勘違い?中田製作所が微細加工技術を可能にした理由
中田製作所は、国内で有数の微細加工技術を持つ企業です。以下では、中田製作所の微細加工技術の特徴について解説します。
◇中田製作所が微細加工技術を持つきっかけ
中田製作所が微細加工技術を習得したきっかけは、受注時の勘違いから始まりました。自動車部品メーカーから「直径0.05ミリの穴あけ加工」を依頼された際、それを0.5ミリと勘違いして引き受けてしまったのです。
引き受けた以上なんとか成功させるべく、中田製作所は工具や加工条件を工夫し、その案件を成功させました。その後、さらに微細な加工の依頼を受けるようになり、微細加工技術を積み上げていったのです。
◇中田製作所の超微細加工技術
中田製作所が誇る超微細加工技術をいくつかご紹介します。
極微小径穴加工
非常に小さな直径の穴を加工する技術です。例えば、直径5マイクロメートルの穴を30ヵ所連続で加工することが可能です。
超微細壁切削加工
薄い壁や細い溝を高精度で切削する技術です。中田製作所では、幅10マイクロメートル、高さ20マイクロメートルの壁を残すことができます。
微細溝切削加工
非常に細い溝を加工する技術です。電子部品や精密機械の溝加工に用いられます。中田製作所では超微細バリ処理も開発され、深さ交差±20マイクロメートルを実現しています。
中田製作所の鏡面加工
中田製作所は、鏡面加工においても高い技術力を誇る企業です。ここでは、中田製作所の鏡面加工の特徴について解説します。
◇中田製作所が鏡面加工に取り組んだ理由
中田製作所が鏡面加工に取り組んだ背景には、従来の研磨技術に対するユーザーからの不満がありました。既存の研磨では、研磨剤の微細な残留や研磨後のわずかな曇りが問題視されていたのです。
この問題を解決するために、同社は専門チームを立ち上げ、切削加工による鏡面処理の研究と開発を開始しました。特に切削刃物や切削油の開発に時間を注ぎ、最終的に高精度な鏡面切削技術を実現しました。
◇中田製作所の鏡面加工の特徴
中田製作所の鏡面加工技術は、精密部品に求められる高い面粗度を切削加工のみで実現する点が特徴です。特殊な刃物を使用し、熱反射や光反射、摺動面を必要とする精密部品の加工を、研磨工程を経ずに達成しています。
この技術により、加工痕のつなぎ目がない幅300mmまでの鏡面加工が可能で、世界で唯一の技術として評価されています。
不純物の混入が無いため、不純物を極端に嫌う半導体製造装置メーカーや液晶製造装置メーカーから信頼を得ている他、反射鏡や治具プレートなど、特に平面度や面粗さが求められる製品に多く利用されています。
不純物の混入が問題ない製品に関しては、研磨やラッピングメーカーとコラボレーションし、ナノレベルの平面度と面粗度を実現しています。中田製作所は、金、銀、銅、白金、樹脂、真鍮などの非鉄金属を中心に、多くの実績を持っており、その技術力は高く評価されています。
鏡面仕上げは、製品表面を滑らかで光沢のある状態に仕上げるための重要な加工技術で、主に「鏡面研磨」と「鏡面加工」の2つの処理方法があります。鏡面研磨は研磨剤を使用し、表面の微細な凹凸を取り除く方法で、鏡面加工は切削や研削を用いて直接表面を滑らかに仕上げます。
鏡面加工は研磨工程を省略できるため、時間とコストを削減でき、ナノスケールの精度を実現します。中田製作所は、幅300mmまでの無痕鏡面加工技術を持ち、この技術は「関西ものづくり新撰2013」に選定されました。
特殊な刃物を使用した鏡面切削技術により、不純物の混入がないため、半導体製造装置メーカーや液晶製造装置メーカーから高い評価を得ています。また、規格外サイズの加工や研磨メーカーとのコラボレーションにより、ナノレベルの精度を実現しています。
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