硬すぎて削れない?マシニングセンタによる難削材加工の難しさと必要条件 | マシニングセンタ大解剖
特集記事
硬すぎて削れない?マシニングセンタによる難削材加工の難しさと必要条件
公開:2024.06.26 更新:2024.06.26難削材の加工は、その硬度や特性ゆえに、一般的な加工方法では容易ではありません。特にマシニングセンタを用いた加工では、適切な工具と切削条件の選定が不可欠です。
例えば、超耐熱合金やインコネルなどの材料は、高温や腐食に強い反面、その硬さから工具の摩耗や切り屑の管理が難しく、加工過程での精度維持が難しい課題があります。こちらでは、難削材の特性ごとの種類や加工を行うために必要なことについて詳しく解説します。
目次
難削材を加工する目的と特性別の種類
難削材とは、一般的な加工方法では容易に形を変えることができない素材のことを指します。これらの材料は、高い耐久性や耐熱性を持ち合わせており、航空宇宙産業や医療機器など、特定の高性能を要求される分野での使用が目的です。
マシニングセンタなどの先進的な加工技術を用いることで、これらの難削材も精密に加工することが可能となります。
◇ 難削材とは
難削材とは、加工や取り扱いが難しい材料のことを指します。難削材にはいくつかの種類があり、それぞれの素材特性によって加工設備や加工条件、切削工具に与える影響が大きく異なります。
例えば、耐摩耗性、耐熱性、耐食性などの特性を持つ難削材は、製品の高機能化や高品質化に不可欠な材料です。しかし、これらの特性があるために、加工が難しくなるのです。
つまり、難削材は高い性能を持ちながらも、その加工には高度な技術と適切な設備が必要です。そのため、難削材の加工を成功させるためには、素材に応じた専門的な知識と経験が求められます。
◇ 特性別の種類
難削材にはさまざまな種類があり、それぞれ特有の性質を持っています。以下で、主な難削材の種類とその特性について解説します。
まず、硬度が高い材料には、超耐熱合金、チタン合金、ステンレスなどがあります。これらは、切削抵抗が大きくなり、工具摩耗が早くなります。
次に、熱伝導率が低い材料には、高硬度鋼(焼入鋼、ダイス鋼、高速度工具鋼、プリハードン鋼)やコバルト基超耐熱合金(ステライトなど)があります。これらの材料は熱を効率的に逃がすことができず、切削中に熱が工具に集中してしまいます。
また、加工硬化性が高い材料には、インコネル、ハステロイ、ワスパロイ、耐熱鋼、高マンガン鋼などがあります。これらの材料は加工中に硬さが増す性質があり、このため工具の刃先が欠けやすくなります。
さらに、工具材種との親和性が大きい材料には、純チタン、ステンレス鋼、チタン合金、超耐熱鋼などがあります。これらの材料は切削抵抗が大きいため、工具にかかる負荷が高くなります。切削抵抗が大きいことで、工具の摩耗や損傷が発生しやすくなります。
最後に、熱膨張率が大きい材料にはステンレス鋼があります。この材料は切削中に熱を受けると膨張しやすくなります。
代表的な難削材を紹介
画像出典:フォトAC
難削材はその特性から加工が困難であり、特別な技術や機械が必要とされます。ここでは、代表的な難削材であるステンレス、チタン、インコネルについて、それぞれの特性や用途を詳しく解説します。
◇ステンレス
ステンレスは、耐食性と耐熱性に優れた合金で、その名の通り「錆びにくい」という特性を持っています。これは、クロムやニッケルなどの元素を含むことにより、表面に酸化クロムの保護膜を形成し、錆や腐食を防ぐためです。ステンレスは、キッチン用品や医療器具、建築材料など、幅広い分野で利用されています。
◇チタン
チタンは、軽量でありながら強度が高く、耐食性にも優れているため、航空宇宙産業や医療分野で重宝されています。また、人体への親和性が高いことから、人工関節やインプラントなどの生体材料としても使用されています。チタンの加工は難しく、高い切削温度や工具の摩耗が問題となることがあります。
◇インコネル
インコネルは、ニッケルを主成分とする超合金で、極めて高い耐熱性と耐食性を持っています。このため、ジェットエンジンや化学プラントの部品など、高温かつ腐食性の環境下で使用されることが多いです。
インコネルの加工には、高度な技術と特殊な工具が必要であり、その加工コストは非常に高くなります。
これらの難削材は、それぞれ独自の特性を活かして、現代社会の様々な分野で不可欠な役割を果たしています。
難削材の加工が難しい理由
難削材の加工には多くの挑戦が伴います。これらの材料は、その特性上、加工時に様々な問題を引き起こす可能性があります。以下に、その主な理由を解説します。
◇ 材料の硬度と加工機器への負担
硬度の高い材料は、加工時に強い抵抗を工具に与えます。これは、材料の原子同士が強く結合しているため、切断や除去するのに多くのエネルギーが必要となるからです。また、加工機器全体にも大きな負担がかかります。
特に、工作機械の主軸や送り軸などの回転機構や、工具ホルダなどの保持機構は、強い切削抵抗によって負荷が集中し、摩耗や破損のリスクが高くなります。そのため、適切な加工方法を選定し、場合によっては研磨、切削、研削などの異なる方法を組み合わせることが必要です。
◇ 材料の変形と加工硬化の問題
加工中に材料が変形することは、精密な加工を行う上で大きな障害となります。特に難削材は、加工時に内部の応力が解放されることで変形しやすくなります。これにより、意図した寸法や形状が崩れてしまい、加工精度に悪影響を及ぼすことがあります。
また、加工硬化も重要な問題です。加工硬化とは、金属に力を加えて塑性変形させると、変形した部分が硬くなる現象を指します。この現象が起こると、変形した部分が硬くなるため、次の加工が難しくなります。
硬くなった金属は脆くもなり、切削や削り取りが困難になるだけでなく、破損しやすくもなります。そのため、加工硬化を避けるために、加工方法や条件を慎重に選定する必要があります。
◇ 切り屑の溶着と発火のリスク
切削加工では、切り屑が発生しますが、難削材の場合、これが溶着してしまうリスクがあります。切り屑が工具や加工面に溶着すると、加工精度が低下するだけでなく、工具の破損にもつながります。
また、切削速度が高い場合には、切り屑が発火する危険もあり、これは作業者の安全にも関わる重大な問題です。
難削材マシニング加工のポイント
難削材のマシニング加工は、精密かつ効率的な方法で行う必要があります。そのためには、マシニングセンタと保持具の剛性を確保し、最適な切削条件を見極め、適切な切削工具を選定することが重要です。
◇マシニングセンタと保持具の剛性
マシニングセンタと保持具の剛性は、加工精度を保つ上で不可欠です。剛性が高いほど、工具の振動が少なくなり、加工面の仕上がりが向上します。また、剛性が確保されていると、より大きな切削力に耐えることができ、加工効率も上がります。
◇最適な切削条件
切削速度と加工条件の調整は、難削材の加工において特に重要です。切削速度が速すぎると工具の摩耗が早まり、遅すぎると加工時間が長くなります。また、加工条件によっては、工具や材料に過度な熱が発生し、品質に影響を与える可能性があります。
そのため、材料の特性や工具の仕様に合わせて、最適な切削条件を見つけることが求められます。
◇適切な切削工具の選定
難削材の特性には硬度の高さや熱伝導率の低さなどがあります。これに応じて、適切な切削工具を選定することが重要です。例えば、硬度の高い材料には超硬合金やダイヤモンドコーティングされた工具が適しています。
熱伝導率の低い材料にはセラミック工具や特殊コーティング工具が効果的です。加工硬化性が高い材料には剛性が必要な高速鋼工具が適しています。これらの適切な工具選びが、高精度で効率的な加工を実現し、品質の向上に寄与します。
難削材は一般的な加工方法では形を変えにくい素材で、航空宇宙や医療機器など高性能分野で重要視されています。これらの材料は耐久性や耐熱性が高く、加工が難しい特性を持っています。
例えば、硬度が高い超耐熱合金やチタン合金、熱伝導率が低い高硬度鋼やコバルト基超耐熱合金、加工硬化性が高いインコネルなどがあります。
これらの材料を効果的に加工するには、適切なマシニングセンタと切削工具の選定が重要です。加工時には、材料の硬度による工具の摩耗や破損、切り屑の溶着や発火のリスクにも注意が必要です。適切な切削条件と工具選びを行うことで、高精度かつ効率的な加工が可能となります。
メディア推奨 メーカー6選