5軸マシニングセンタで多面同時加工を実現!3軸マシニングセンタとの違いと利点 | マシニングセンタ大解剖
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5軸マシニングセンタで多面同時加工を実現!3軸マシニングセンタとの違いと利点
公開:2024.05.27 更新:2024.05.27製造業界では、複雑な形状や高精度の加工が求められる中、5軸マシニングセンタの導入が進んでいます。5軸マシニングセンタは、X軸、Y軸、Z軸に加え、回転軸と傾斜軸を備え、多面同時加工が可能です。これにより、3軸マシニングセンタでは難しかった複雑な加工が効率的に行えます。
こちらでは、5軸マシニングセンタの多面同時加工の実現と、3軸マシニングセンタとの違いや利点について詳しく解説します。
目次
5軸マシニングセンタの特徴と種類
現代では、さまざまな部品や金型が増えており、形状も複雑化しているものも少なくありません。そのため、近年金属などの加工業界では、多種多様な形状を加工できる5軸マシニングセンタへの注目が高まっています。
◇5軸マシニングセンタの特徴
5軸マシニングセンタとは、X軸、Y軸、Z軸に加えて、工具や加工物の向きを変える回転軸(C軸)と傾斜軸(B軸)を備えた切削加工機です。一般的なマシニングセンタは、X軸、Y軸、Z軸の3軸で工具の位置を制御し、フライス盤やボール盤、中ぐり盤などの機能を持っています。
5軸マシニングセンタは、これに回転軸と傾斜軸を追加し、加工物を回転させたり傾けたりできる機能を備えています。これにより、工具の交換や加工面の変更が自動化され、作業効率が大幅に向上します。
5軸マシニングセンタは、複雑な形状や高精度が求められる加工に適しており、一度のセットアップで多種多様な加工を行えるため、製造現場での生産性を高める強力なツールとなります。
◇割り出し5軸加工と同時5軸加工
5軸加工方法には、割り出し5軸加工と同時5軸加工の2種類あります。割り出し5軸加工とは、加工面の決定・変更時に回転軸・傾斜軸を使用する方法です。加工の際に直交3軸のみを制御して切削を行い、加工物の着脱が不要で取付治具と個数削減、寸法精度向上につながります。
割り出し5軸加工は、穴あけ・ポケット加工などの2次元加工や加工面の多い加工物に適しています。2つ目の同時5軸加工は、5軸を同時に動かして切削する方法です。曲面やアンダーカットなど難しい加工形状の製品の加工が可能で継ぎ目の少ない仕上げ面の実現も可能で、航空機部品・精密金型などの加工に向いています。
5軸マシニングセンタと3軸マシニングセンタの違い
画像出典先:株式会社アウトソーシングテクノロジー
現代の製造業において、効率的で高精度な加工技術の導入は不可欠です。特に、複雑な形状や高い精度が要求される製品の加工には、従来の3軸マシニングセンタでは限界がある場合があります。ここで、5軸マシニングセンタと3軸マシニングセンタの違いについて詳しく解説します。
◇5軸マシニングセンタと3軸マシニングセンタの違い
3軸マシニングセンタは、回転軸のみが搭載されており工具の位置を自由に決められますが、工具が一定の向きのため加工面の変更できないのが特徴です。そのため、加工面を変更する際はその都度取り外し固定する必要があります。
一方の5軸マシニングセンタには、回転軸と傾斜軸が両方搭載されており、工具の向きを自由に変更が可能です。加工物を横にしたまま回転もできるため、複雑な形状の加工に強いのも魅力といえます。
◇3軸マシニングセンタのデメリット
3軸マシニングセンタは、工具の向きが一定方向のため基本的に簡単な形状のものの加工を得意としていますが、複雑な形状の加工には向きません。また傾斜軸がなく、複雑な形状の加工物を加工する際は専用の治具を使用しての加工が必要となります。その分コストがかかってしまうのもデメリットです。
5軸マシニングセンタの利点
5軸マシニングセンタは、加工の柔軟性と精度を大幅に向上させることで、生産効率を高めます。ここでは、5軸マシニングセンタが持つ具体的な利点について詳しく解説します。
◇突き出し量を短くできる
5軸マシニングセンタは、工具の突き出し量を短くできます。工具や加工物を傾けられるため、自由な方向から加工ができ突き出し量が短いままでも加工が可能です。3軸マシニングセンタの場合は、加工物と工具が干渉しやすいため突き出し量を長くする必要があります。
しかし、突き出し量が長くなると剛性が低くなり、工具の動きにブレが生じて精度が保てません。その点5軸マシニングセンタは突き出し量が短いため剛性が高く、工具への衝撃も抑えられます。結果、ランニングコストを削減できるのもメリットのひとつです。
◇一度のセッティングで加工できる
5軸マシニングセンタの大きな利点の一つは、一度のセッティングで多面加工ができることです。従来の3軸マシニングセンタでは、加工する面を変えるたびにチャッキング(工具や工作物の固定)を行い、段取り替えをしなければなりません。これにはテーブルや加工物を動かす必要があり、位置がずれるリスクや時間の浪費が生じます。
一方、5軸マシニングセンタでは、加工物や工具を回転させたり傾けたりすることができるため、一度のチャッキングで複数の面を加工することが可能です。これにより、高精度を維持しながら、段取り替えの時間を大幅に削減できます。この効率化により、生産性が向上し、複雑な形状の加工もより迅速かつ正確に行えるようになります。
◇加工位置を選べる
5軸マシニングセンタの利点の一つは、切削工具の加工位置を自由に選べることです。具体的には、先端が球状のボールエンドミルを使った加工で顕著に現れます。3軸マシニングセンタでは、工具を垂直にして加工するため、切削面に「むしれ」と呼ばれる不具合が生じやすくなります。
しかし、5軸マシニングセンタでは、ボールエンドミルと加工物の接触箇所を任意に設定できるため、工具の最適な部分で加工が行えます。これにより、加工面の精度が向上し、より高品質な仕上がりが実現できるのです。
5軸マシニングセンタの事例を紹介
5軸マシニングセンタを活用した製品も増えており、導入している業界もさまざまです。ここからは5軸マシニングセンタを導入して加工した事例をご紹介します。
◇5軸マシニングセンタで多面の同時加工を実現
ある製造工場で加工された製品は、傾斜面に垂直な斜め穴があり、面を跨いだ幾何公差の指示もあったため同時加工が必要でした。厚み30mmを貫通するφ2穴があり、穴も深いため両端からの加工も必要です。そのため、段差を抑えるため、5軸マシニングセンタを使用して工程替えをせずに加工が実現しました。
◇自動化で高い生産性
5軸マシニングセンタを導入することで、高い生産性を実現しました。当初、人手不足と自動化の必要性に直面し、ロボット導入を検討していましたが、多品種小ロット生産の特性やその他の要因からロボット導入を断念しました。最終的に、5軸マシニングセンタを導入することに決めました。
5軸マシニングセンタは、多数個取りの加工を採用しており、多品種小ロット生産を無人で行えるようになりました。これにより、人手不足が解消され、生産効率が大幅に向上しました。さらに、自動化によるコストダウンも実現し、受注率も向上しました。結果として、5軸マシニングセンタの導入は、効率化と生産性の向上に大きく貢献しました。
現代の製造業では、複雑な形状や高精度の加工が求められ、5軸マシニングセンタへの注目が高まっています。5軸マシニングセンタは、X軸、Y軸、Z軸に加えて、回転軸(C軸)と傾斜軸(B軸)を備え、工具や加工物の向きを変えられるため、複雑な形状の加工が可能です。
これにより、工具の交換や加工面の変更が自動化され、作業効率が大幅に向上します。5軸マシニングセンタには、加工面の決定・変更時に回転軸・傾斜軸を使用する割り出し5軸加工と、5軸を同時に動かして切削する同時5軸加工の2種類があります。
従来の3軸マシニングセンタでは対応が難しい複雑な加工も、5軸マシニングセンタなら高精度かつ効率的に行えます。具体的な利点には、工具の突き出し量を短く保ち、高剛性を維持できることや、一度のセッティングで多面加工が可能であることが挙げられます。これにより、段取り替えの時間が大幅に削減され、生産性が向上します。
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