金属加工の基礎!マシニングセンタとフライス盤や旋盤の違いとは? | マシニングセンタ大解剖
マシニングセンタの基本
金属加工の基礎!マシニングセンタとフライス盤や旋盤の違いとは?
公開:2024.03.28 更新:2024.03.28フライス盤と旋盤は、金属加工に不可欠な工作機械で、フライス盤は金属を固定して回転刃で複雑な形状を創出し、手動の汎用型から数値制御のNC、CNC型へと技術が発展しています。旋盤は材料を回転させて円筒形状を加工し、外径や内径など多彩な加工法があります。
マシニングセンタはこれらを統合し、自動工具交換で効率的かつ精密な加工を実現する進化形です。立て形、横形、門形、5軸の各種タイプがあり、用途に合わせて選べますが、プログラムの複雑性や加工状況の見えづらさ、深い加工の限界など、導入前に検討すべきデメリットも存在します。
目次
金属などを切削するフライス盤とは?
フライス盤は、金属などの素材を切削加工するための工作機械です。工業分野では広く利用されており、機械部品や金属加工製品の製造に欠かせません。
◇フライス盤とは
フライス盤は、加工工程で金属などの素材を切削する機械です。素材をバイスなどに固定し、フライス盤の主軸が回転することで切削されます。この方法により、精密な形状や溝を持つ加工物を作り出すことが可能です。フライス盤は、複雑な形状に加工する際に非常に有用です。
◇汎用フライス盤
汎用フライス盤は、工具や被削材の取り付けや機械の操作など、全てを手動で行うタイプになります。プログラムの作成や入力が不要なため、すぐに加工作業を始めることが可能です。ただし、加工精度は作業者の経験や技術に大きく左右されるため、注意が必要です。手動操作による柔軟性や即応性が特長であり、小規模な加工作業に適しています。
◇NCフライス盤とCNCフライス盤
NCフライス盤は、数値制御によりX/Y/Z軸の3次元加工を自動で行うタイプのフライス盤です。被加工材の位置や動きなどを数値化して機械を操作するため、高い精度で品質のバラつきを抑えた加工ができます。
一方、CNCフライス盤は、コンピュータ制御によって自動加工を行う最新のタイプです。近年では、CNCフライス盤が主流となっており、多くの産業で使用されています。
素材を円筒形状に削る旋盤とは?
円筒形状に削る旋盤は、金属やその他の素材を円筒状に加工するための機械です。回転する主軸に素材を取り付け、刃物を使って素材を削り出します。
◇旋盤とは
旋盤は、回転する台座に金属材を取り付け、工具を使ってワークを削る機械です。工具の選択やワークの取り付け方により、様々な形状に加工できます。金属加工において、最も一般的な機械の一つと言えます。
大きな特徴は、加工対象の金属を回転させることで、円筒状の形状を作り出すのに適している点です。この特性を生かして、円筒形状の加工物を効率的かつ精密に製造できます。
◇旋盤の種類
旋盤には様々な種類がありますが、主に使われるのは5種類です。
・普通旋盤
作業者が手動で刃物の送り操作や工具の交換作業を行います。
・卓上旋盤
小型で手動操作ができるため、小さな部品、試作品、特注品などの製作に用いられます。手動操作であるため大量生産に向かない、品質が作業者の熟練度に左右されやすいといった欠点があります。
・立旋盤
主軸が縦向きで精度が高く、大きな製品も加工できます。ただし、芯押し台がないため、長尺のワークに対応できない場合があります。
・横旋盤
主軸が横向きで、切りくずが地面に落ちるため部材に傷がつきにくく、連続加工が容易です。ただし、加工物がたわむ可能性があります。
・NC旋盤(CNC旋盤)
コンピュータによる制御で高い生産性と品質を実現しますが、プログラミングやテスト稼働の工数が必要です。タレット旋盤では工具の切り替えが容易で、加工全体の工数を減らせます。
◇様々な加工方法
旋盤では、5種類の加工方法があります。
・外径加工
最初の工程で使用されるとこが多く、ワークの外側から削り出しを行う方法です。段差や勾配を付けながら大まかにワークの形状へ加工し、場合によっては表面の仕上げも行います。
・穴あけ加工
ワークの内側に工具をあてて穴を空ける加工です。穴あけにはドリルを、穴の精度調整や仕上げにはリーマを使用します。精度が高くないため、次の内径加工で整えることもあります。
・内径加工
ワークの内側にバイトという工具を当てて加工する方法で、穴ぐりや中ぐりとも呼ばれます。内径が深い場合は加工精度に注意が必要です。また、内径加工には、テーパ加工も含まれます。円筒状のワークをすり鉢状に加工する方法で、角度調整でテーパの大きさを調整できます。
・溝加工
ワークを回転させ、垂直に工具(刃物)をあてて溝を作る加工方法です。曲面加工では、ワークを縦横に動かして曲面上に加工します。
・ねじ切り加工
ワークを回転させ、専用工具でねじ山を作る加工です。「おねじ」はタップでワークの外側に、「めねじ」はダイスで内側にねじ切りをします。
フライス盤や旋盤とマシニングセンタの違い
フライス盤、旋盤、マシニングセンタは工業製造における重要な加工機械ですが、それぞれ異なる特徴があります。これらの違いを理解することは、製造業における効率性と品質向上に不可欠です。
◇フライス盤とマシニングセンタの違い
フライス盤とマシニングセンタの主な違いは、ATC(Automatic Tool Changer)装置の有無です。一般的なフライス盤では工具が1本しか付属しておらず、加工の切り替え時には作業者が手作業で工具を交換する必要があります。
一方、マシニングセンタにはNC装置とATC装置が搭載されており、これにより工具の自動交換が可能となります。この自動化により、生産性や加工精度が向上するだけでなく、作業の安全性も高まります。
◇旋盤とマシニングセンタの違い
旋盤とマシニングセンタの主な違いは、加工の手法です。旋盤ではワークを回転させ、固定した工具を使って削り出すのに対し、マシニングセンタではワークを固定し、回転させた工具を使って削り出します。
この差異から、マシニングセンタは角材の加工に適しており、旋盤は丸材の加工に適していると言えます。また、これらを組み合わせた複合加工機を用いれば、一台の機械で複数の工程を終えることが可能です。
マシニングセンタの種類とは?
マシニングセンタは工業製造における重要な加工機械であり、その種類は様々です。そのため、用途や加工条件に応じて適切な種類を選ぶことが大切になります。
◇立て形マシニングセンタ
立て形マシニングセンタは、切削工具を取り付ける主軸が垂直方向に配置され、加工物を上から加工するタイプのマシニングセンタです。X軸(縦)、Y軸(横)、Z軸(高さ)に動くことで、加工を観察しながら作業ができます。また、コンパクトで設置面積を小さく抑えられるため、幅広い産業で普及しています。
ただし、切り屑の排出が難しいため、チッピングによる刃物の摩耗が生じることがあり、大量生産には向かない特性があります。
◇横形マシニングセンタ
横形マシニングセンタは、切削工具を取り付ける主軸が地面に対して水平方向に配置されたタイプのマシニングセンタです。立形と同様にX軸(縦)、Y軸(横)、Z軸(高さ)に動きますが、加工物を横から削るため、切り屑の排出性に優れています。
さらに、自動で部品の搬送作業を行うパレットチェンジャーを設置できるため、長時間の連続稼働が可能となり、量産に向いています。
◇門形マシニングセンタ
門形マシニングセンタは、正面から見たときに機械が門の形をしているタイプのマシニングセンタです。広く長いテーブルを備えており、特に重量物や大型の製品を加工する際に使用されます。
主軸(刃物の回転軸)が縦向きに配置されており、加工テーブルが広いため、船のプロペラや発電機のタービンなど、大きな金属の重切削に適しています。
◇5軸マシニングセンタ
5軸マシニングセンタは、直線軸であるX軸、Y軸、Z軸に加えて、2方向の回転軸を有するマシニングセンタです。3軸だけでは、作業員が加工物を手動で回転させる必要がありますが、5軸ではワークの設置作業が1度で済むため、付け替えによる精度のバラつきを防ぎます。この機能により、複雑な形状の加工が可能です。 ただし、制御する部分が増えるため、高度なプログラミング知識が必要となります。5軸マシニングセンタは航空宇宙、医療、自動車などの分野で広く使用されています。
フライス盤と旋盤は金属加工における基本的な工作機械で、フライス盤は金属を固定し、回転する刃で切削することで複雑な形状を作り出します。汎用型は全て手動で操作し、NC型やCNC型は数値制御により自動加工を実現します。一方、旋盤は材料を回転させて工具で削ることで円筒形状を加工し、外径や内径加工など多様な方法があります。
マシニングセンタはこれらの進化形で、フライス加工と旋盤加工の機能を統合し、自動工具交換装置(ATC)により高効率・高精度な加工を可能にします。立て形、横形、門形、5軸といったさまざまなタイプがあり、製造ニーズに応じた選択が可能ですが、プログラミングの複雑さや加工状況の把握が難しい点、深い加工の制限など、考慮すべきデメリットも存在します。
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