金属加工の基礎!マシニングセンタとフライス盤や旋盤の違いとは? | マシニングセンタ大解剖
マシニングセンタの基本
金属加工の基礎!マシニングセンタとフライス盤や旋盤の違いとは?
公開:2024.03.28 更新:2025.03.03
フライス盤と旋盤は、金属加工に不可欠な工作機械で、フライス盤は金属を固定して回転刃で複雑な形状を創出し、手動の汎用型から数値制御のNC、CNC型へと技術が発展しています。旋盤は材料を回転させて円筒形状を加工し、外径や内径など多彩な加工法があります。
マシニングセンタはこれらを統合し、自動工具交換で効率的かつ精密な加工を実現する進化形です。立て形、横形、門形、5軸の各種タイプがあり、用途に合わせて選べますが、プログラムの複雑性や加工状況の見えづらさ、深い加工の限界など、導入前に検討すべきデメリットも存在します。
目次
金属などを切削するフライス盤とは?
NCフライス盤は、数値制御によってX/Y/Z軸の3次元加工を自動で行うフライス盤で、被加工材の位置や動きなどを数値化して機械を操作します。これにより、高い精度で品質のバラつきを抑えた加工が可能になります。「NC」は「Numerical Control」の略で、数値制御技術を指します。
一方、CNCフライス盤は、コンピュータ制御を活用して自動加工を行う最新型のフライス盤です。CNCの「C」は「Computer」の略で、コンピュータの力を利用した制御を意味します。近年では、CNCフライス盤が主流となり、ほとんどの産業で広く使用されています。逆に、コンピュータ制御がない従来のNCフライス盤は、現在では珍しい存在となっています。そのため、NCフライス盤とCNCフライス盤がほぼ同義で使われることも増えています。
NCフライス盤やCNCフライス盤は、汎用フライス盤に比べて高価で、プログラムの習得や開発に時間がかかります。しかし、その分、数値制御やコンピュータ制御によって、手作業や汎用フライス盤では難しい複雑な加工が可能になりました。また、作業者の技術に依存せず、退職や欠勤による影響を受けることなく、安定して高精度な加工が可能となります。
NCフライス盤・CNCフライス盤には、以下のような種類があります。
◇NC立てフライス盤
刃物の回転軸が縦向きで、ワークの上からツールで加工します。テーブルの移動方式により、ベッド形やニー形に分かれ、金属の表面や四角い金属の加工に適しています。
◇NC横フライス盤
刃物の回転軸が横向きで、ワークの側面からツールで加工します。NC立てフライス盤と同様、テーブルの移動方式によって、ベッド形やニー形に分かれます。
◇小型NCフライス盤
小型で、低コスト・省スペースで導入可能なNCフライス盤です。マーキングや模様の彫刻などに使われるNC彫刻機や、特に小型で研究や試作などに利用される卓上CNCフライス盤が含まれます。
◇マシニングセンタ
マシニングセンタは、NCフライス盤やCNCフライス盤に自動工具交換装置(ATC機能)が追加されたもので、生産性や安全性に優れています。機能が増えた分、コストも高く、プログラムの習得や開発により多くの時間がかかります。
◇複合加工機
マシニングセンタに旋盤の機能が追加された複合加工機は、省力化や省人化、高精度な加工を実現しますが、さらにコストが高く、プログラムの習得や開発には時間がかかります。
◇フライス盤の刃物タイプ
フライス盤の刃物は主に「ボアタイプ」と「シャンクタイプ」に大別されます。それぞれの定義や特徴を見てみましょう。
ボアタイプ
歯車のような形の刃物で、広い面積の平面加工や側面加工、段加工に適しています。アーバと呼ばれる保持具でフライス盤に取り付けられ、平フライス、側フライス、角フライスなどの種類があります。
シャンクタイプ
ドリルのような形をした刃物で、狭い面積の平面加工や段加工、溝加工に適しています。ツールチャックやコレットチャックと呼ばれる保持具でフライス盤に取り付けられ、2枚刃エンドミルやテーパーエンドミル、スクエアエンドミルなどが含まれます。
素材を円筒形状に削る旋盤とは?
円筒形状に削る旋盤は、金属やその他の素材を円筒状に加工するための機械です。回転する主軸に素材を取り付け、刃物を使って素材を削り出します。
◇旋盤とは
旋盤は、回転する台座に金属材を取り付け、工具を使ってワークを削る機械です。工具の選択やワークの取り付け方により、様々な形状に加工できます。金属加工において、最も一般的な機械の一つと言えます。
大きな特徴は、加工対象の金属を回転させることで、円筒状の形状を作り出すのに適している点です。この特性を生かして、円筒形状の加工物を効率的かつ精密に製造できます。
◇旋盤の種類
旋盤には様々な種類がありますが、主に使われるのは5種類です。
普通旋盤
作業者が手動で刃物の送り操作や工具の交換作業を行います。
卓上旋盤
小型で手動操作ができるため、小さな部品、試作品、特注品などの製作に用いられます。手動操作であるため大量生産に向かない、品質が作業者の熟練度に左右されやすいといった欠点があります。
立旋盤
主軸が縦向きで精度が高く、大きな製品も加工できます。ただし、芯押し台がないため、長尺のワークに対応できない場合があります。
横旋盤
主軸が横向きで、切りくずが地面に落ちるため部材に傷がつきにくく、連続加工が容易です。ただし、加工物がたわむ可能性があります。
NC旋盤(CNC旋盤)
コンピュータによる制御で高い生産性と品質を実現しますが、プログラミングやテスト稼働の工数が必要です。タレット旋盤では工具の切り替えが容易で、加工全体の工数を減らせます。
◇様々な加工方法
旋盤では、5種類の加工方法があります。
外径加工
最初の工程で使用されるとこが多く、ワークの外側から削り出しを行う方法です。段差や勾配を付けながら大まかにワークの形状へ加工し、場合によっては表面の仕上げも行います。
穴あけ加工
ワークの内側に工具をあてて穴を空ける加工です。穴あけにはドリルを、穴の精度調整や仕上げにはリーマを使用します。精度が高くないため、次の内径加工で整えることもあります。
内径加工
ワークの内側にバイトという工具を当てて加工する方法で、穴ぐりや中ぐりとも呼ばれます。内径が深い場合は加工精度に注意が必要です。また、内径加工には、テーパ加工も含まれます。円筒状のワークをすり鉢状に加工する方法で、角度調整でテーパの大きさを調整できます。
溝加工
ワークを回転させ、垂直に工具(刃物)をあてて溝を作る加工方法です。曲面加工では、ワークを縦横に動かして曲面上に加工します。
ねじ切り加工
ワークを回転させ、専用工具でねじ山を作る加工です。「おねじ」はタップでワークの外側に、「めねじ」はダイスで内側にねじ切りをします。
◇旋盤の基本構造
旋盤は、主に以下の5つのパーツから構成されています。それぞれの役割を詳しく説明します。
本体
本体部分は、旋盤の中心となる部分で、主軸、刃物台、心押し台などが含まれます。主軸はワークを回転させるための重要な部分であり、切削加工を行うためにワークをしっかりと保持します。刃物台は切削工具を取り付ける部分で、その形状によって「タレット型」や「くし型」に大別されます。タレット型は工具を円形のタレット(回転盤)に配置し、くし型は直線的に工具を並べる形式です。心押し台は、長いワークを支持して加工中の振れを抑え、精度を向上させる役割を担っています。
NC装置
NC装置は、数値制御装置(CNC旋盤)の心臓部です。数値演算部やサーボ制御部などで構成され、ワークに対する経路や加工の作業工程を数値化し、制御する役割を果たします。これにより、複雑な加工を自動化し、高精度で効率的な加工が可能になります。
操作盤
操作盤は、旋盤を操作するためのインターフェース部分です。ボタンやタッチパネルが配置され、操作が直感的に行えるようになっています。最近では、スマートフォンのようにタッチ操作で簡単にプログラムの作成や本体の操作ができるものが増えてきています。操作盤は、加工の設定や監視、さらにはNCプログラムの入力も行う重要な部分です。
オイルユニット
オイルユニットは、油圧ユニットと潤滑油ユニットの2つの部分から成ります。油圧ユニットは、油圧タンク、油圧バルブ、油圧ポンプから構成され、機械内部の動作に必要なエネルギーを提供します。潤滑油ユニットは、移動する部品に潤滑油を供給し、摩擦や摩耗を軽減することで機械の寿命を延ばし、安定した動作を維持します。
付属装置
付属装置は、旋盤の機能を補完する周辺装置を指します。例えば、ワークを自動で供給するローダや、加工後のワークを保管するストッカ、切り屑を自動的に運ぶチップコンベアなどが含まれます。これらの装置により、効率的な加工が実現し、作業者の負担が軽減されます。
これらの基本的な構成要素が連携して、旋盤は高精度で効率的な加工を実現します。
フライス盤や旋盤とマシニングセンタの違い
フライス盤、旋盤、マシニングセンタは工業製造における重要な加工機械ですが、それぞれ異なる特徴があります。これらの違いを理解することは、製造業における効率性と品質向上に不可欠です。
◇フライス盤とマシニングセンタの違い
フライス盤とマシニングセンタの主な違いは、ATC(Automatic Tool Changer)装置の有無です。一般的なフライス盤では工具が1本しか付属しておらず、加工の切り替え時には作業者が手作業で工具を交換する必要があります。
一方、マシニングセンタにはNC装置とATC装置が搭載されており、これにより工具の自動交換が可能となります。この自動化により、生産性や加工精度が向上するだけでなく、作業の安全性も高まります。
◇旋盤とマシニングセンタの違い
旋盤とマシニングセンタの主な違いは、加工の手法です。旋盤ではワークを回転させ、固定した工具を使って削り出すのに対し、マシニングセンタではワークを固定し、回転させた工具を使って削り出します。
この差異から、マシニングセンタは角材の加工に適しており、旋盤は丸材の加工に適していると言えます。また、これらを組み合わせた複合加工機を用いれば、一台の機械で複数の工程を終えることが可能です。
◇複合加工機とマシニングセンタの違い
複合加工機とマシニングセンタの大きな違いは、旋盤機能があるかどうかです。複合加工機は、マシニングセンタに旋盤機能を加えたもので、1台で多くの加工工程をこなすことができます。
複合加工機は旋盤から進化したため、3次元的な加工に強みがあります。一方、マシニングセンタはフライス盤から進化したため、ワークの回転を利用した加工が得意です。
マシニングセンタの種類とは?
マシニングセンタは工業製造における重要な加工機械であり、その種類は様々です。そのため、用途や加工条件に応じて適切な種類を選ぶことが大切になります。
◇立て形マシニングセンタ
立て形マシニングセンタは、切削工具を取り付ける主軸が垂直方向に配置され、加工物を上から加工するタイプのマシニングセンタです。X軸(縦)、Y軸(横)、Z軸(高さ)に動くことで、加工を観察しながら作業ができます。また、コンパクトで設置面積を小さく抑えられるため、幅広い産業で普及しています。
ただし、切り屑の排出が難しいため、チッピングによる刃物の摩耗が生じることがあり、大量生産には向かない特性があります。
◇横形マシニングセンタ
横形マシニングセンタは、切削工具を取り付ける主軸が地面に対して水平方向に配置されたタイプのマシニングセンタです。立て形と同様にX軸(縦)、Y軸(横)、Z軸(高さ)に動きますが、加工物を横から削るため、切り屑の排出性に優れています。
さらに、自動で部品の搬送作業を行うパレットチェンジャーを設置できるため、長時間の連続稼働が可能となり、量産に向いています。
◇門形マシニングセンタ
門形マシニングセンタは、正面から見たときに機械が門の形をしているタイプのマシニングセンタです。広く長いテーブルを備えており、特に重量物や大型の製品を加工する際に使用されます。
主軸(刃物の回転軸)が縦向きに配置されており、加工テーブルが広いため、船のプロペラや発電機のタービンなど、大きな金属の重切削に適しています。
◇5軸マシニングセンタ
5軸マシニングセンタは、直線軸であるX軸、Y軸、Z軸に加えて、2方向の回転軸を有するマシニングセンタです。3軸だけでは、作業員が加工物を手動で回転させる必要がありますが、5軸ではワークの設置作業が1度で済むため、付け替えによる精度のバラつきを防ぎます。この機能により、複雑な形状の加工が可能です。 ただし、制御する部分が増えるため、高度なプログラミング知識が必要となります。5軸マシニングセンタは航空宇宙、医療、自動車などの分野で広く使用されています。
マシニングセンタを取り扱っている企業を紹介
NCフライス盤やCNCフライス盤にATC機能を加えたマシニングセンタは、工業製造において重要な役割を果たしています。以下に、マシニングセンタを取り扱う主要な企業を6社紹介します。
◇メクトロン
メクトロンは自動化やファクトリーオートメーションに強みを持つ企業で、ドリリング・タッピングマシンやロボット、梱包自動化システムなどを幅広く扱っています。最近では、マシニングセンタに注力し、マガジンダイレクトATCやダブルアームATCなど、さまざまなタイプの工具交換システムを開発しています。特に小型マシニングセンタに強みがあり、BT30〜40、テーブルサイズ数百mm〜1m前後の機種が豊富です。
◇ブラザー工業
ミシンやレーザープリンタ、複合機で知られるブラザー工業は、マシニングセンタでも高いシェアを誇ります。日本国内だけでなく、特に中国やASEAN諸国で人気があります。特に「SPEEDIO」シリーズで知られ、タレット式マガジンを搭載したBT30番小型マシニングセンタが生産性の高い製品として広く認知されています。
◇静岡鐵工所
静岡鐵工所は、マシニングセンタに加え、汎用フライス盤やNCフライス盤なども製造する工作機械メーカーです。1937年にフライス盤や旋盤の製造を開始し、1978年には立て形マシニングセンタの製造を始めました。特に小型マシニングセンタ「DT-30」は軽金属の小物部品加工や試作・モデル加工に適しており、評価されています。
◇ニデックオーケーケー
創業100年以上の歴史を持つニデックオーケーケーは、マシニングセンタを主力製品とする老舗の工作機械メーカーです。1977年にマシニングセンタの開発を始め、2022年にニデックグループに加わり、社名を変更しました。BT40〜50、テーブルサイズ数百mm〜2mの中型マシニングセンタを多く取り扱い、特に立て形マシニングセンタのVMシリーズが自動車部品や金型加工で広く使われています。
◇日精ホンママシナリー
日精ホンママシナリーは、カスタムメイドの工作機械を製造するメーカーで、特に大型マシニングセンタに強みがあります。テーブルサイズ2m〜3m以上の機種を中心に、10mを超える門形マシニングセンタも取り扱っています。鉄道や航空、造船などの輸送機器業界に特に需要があり、建築や電力、エネルギー産業でも広く利用されています。
◇オークマ
オークマは、国内トップシェアを誇る日系三大工作機械メーカーのひとつです。CNC旋盤や5軸マシニングセンタ、複合加工機など、最新の工作機械を取り扱っており、特に中〜大型のマシニングセンタに強みがあります。オークマのマシニングセンタは、精度や剛性、熱変位補正技術などが高く評価され、MBやMCR、MU、GENOSシリーズなど、さまざまな機種を展開しています。
フライス盤と旋盤は金属加工における基本的な工作機械で、フライス盤は金属を固定し、回転する刃で切削することで複雑な形状を作り出します。汎用型は全て手動で操作し、NC型やCNC型は数値制御により自動加工を実現します。一方、旋盤は材料を回転させて工具で削ることで円筒形状を加工し、外径や内径加工など多様な方法があります。
マシニングセンタはこれらの進化形で、フライス加工と旋盤加工の機能を統合し、自動工具交換装置(ATC)により高効率・高精度な加工を可能にします。立て形、横形、門形、5軸といったさまざまなタイプがあり、製造ニーズに応じた選択が可能ですが、プログラミングの複雑さや加工状況の把握が難しい点、深い加工の制限など、考慮すべきデメリットも存在します。
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