コスト削減にもつながるマシニングセンタを導入するメリットとは？ | マシニングセンタ大解剖

マシニングセンタはNC工作機械とともに製造業の核心技術であり、その主な違いは自動工具交換機能（ATC）の有無です。ATCを装備したマシニングセンタは、一台で複数の加工作業を自動で実行でき、生産効率を大幅に高めます。一方、NC工作機械も数値制御技術により高精度の加工を可能にしますが、マシニングセンタのような自動化機能は備えていません。立形、横形、門形、5軸など、様々なタイプがあり、それぞれが自動車から航空宇宙産業まで、特定の生産要件に応じた利点を提供します。

導入により、多様な加工能力、生産性の向上、コスト削減などのメリットがありますが、プログラムの複雑さや加工状況の確認が難しい点などのデメリットも考慮する必要があります

マシニングセンタとは？NC工作機械との違い

マシニングセンタとNC工作機械は、工業分野における重要な加工装置ですが、それぞれ異なる特徴を持っています。NC工作機械では加工のたびに工具交換が必要となる一方、マシニングセンタはATCを備えているため工具交換が自動化されます。

◇マシニングセンタとは

マシニングセンタは、自動的に切削工具を交換できる機能を持ち、穴あけや平面削りなどの切削加工を1つの装置で実行できる機械です。マシニングセンタの主な特徴は、加工プログラムに応じて工具を自動的に交換することができる自動工具交換装置（ATC）を搭載している点です。

◇NC工作機械とは

NC工作機械は、数値制御（NC）技術を利用して、素材に対する工具の順序や加工に必要な作業工程を数値情報で指示する機械です。このNC装置が搭載された工作機械全般を指し、加工の精度や効率を向上させます。NC工作機械は、様々な工業分野で利用され、自動車産業や航空産業などで特に重要な役割を果たしています。

◇両者の違い

両者とも高い繰り返し精度や量産加工、複雑形状の加工が可能です。しかし、大きな違いは自動工具交換装置（ATC）の有無です。NC工作機械では、加工自体はプログラムによって自動で行われますが、複雑な加工や難削材の場合は工具交換が必要であり、そのため加工効率が低下します。

一方、マシニングセンタはATCを搭載しており、作業者が工具を交換する手間が省かれるため、加工効率が高くなります。両者は数値制御によって加工する点で共通していますが、ATCの有無によって効率に大きな差があるのです。

マシニングセンタを導入するメリットとは？

マシニングセンタを導入するメリットは多岐に渡ります。最も大きいのが自動化された加工作業を提供し、労働力を削減しつつ生産性の向上が可能という点です。

◇NCプログラム

NCプログラムを使用することで、加工条件を機械に数値情報で指示できます。これにより、加工作業が自動化され、生産性が向上します。また、プログラムを活用することで、人の手では難しい複雑な加工も可能です。そのため、加工形状の幅が広がり、さまざまな製品を効率的に生産できます。

◇様々な加工ができる

マシニングセンタを導入すると、様々な加工ができます。中ぐり、フライス削り、穴あけ、ネジ立て、リーマ仕上げなど、多岐にわたる加工がマシニングセンタで行えます。これにより、自動車産業や航空産業などの様々な金属部品を効率的に製造できます。

また、マシニングセンタは一般的に自動工具交換装置（ATC）を備えており、異なる工具を自動的に交換して複数の加工作業を連続して行うことが可能です。

◇人件費削減

マシニングセンタは、加工が自動化されているため、人件費の抑制に寄与します。また、工具交換にかかる時間が短いため、加工にかかる時間も短縮されます。プログラムの作成には時間がかかりますが、完成すれば自動的に加工を実行するため、結果的に人件費を節約しながら生産性を向上させることが可能です。

◇コスト削減

マシニングセンタは1台で様々な工具を用いて加工を行い、工具の交換も自動で行われます。そのため、保有する工作機械が減り、メンテナンスコストの削減に繋がります。また、5軸制御のマシニングセンタを導入すると、他方向から加工が可能となり、材料を固定する治具（チャッキング）の製作にかかる費用と時間を減らせます。

◇教育コスト削減

マシニングセンタを導入すれば機械が加工を行うため、職人の育成にかかる時間や労力が省けます。加工の自動化により、職人のスキルを必要とする部分が減少し、教育コストも削減できます。もちろん、マシンの管理やプログラムの作成など、一部の作業では人手が必要ですが、それでも人件費の大幅な削減が期待できるでしょう。

マシニングセンタの種類とメリットとは？

マシニングセンタは、立て形、横形、門形、5軸など、さまざまなタイプがあります。そして、それぞれ異なる特徴やメリットがあります。

◇立て形マシニングセンタのメリット

立て形マシニングセンタのメリットは、図面と切削工具の向きが同じであるため、加工内容が直感的に理解しやすいことです。また、主軸が上下に動く構造のため、作業員は切削工具の刃先とワークの距離を容易に確認でき、精密な加工が可能です。さらに、本体が小型であるため、省スペースで設置できます。

◇横形マシニングセンタのメリット

横形マシニングセンタのメリットは、水平に加工するため、切削後の「切粉」が効率的に排出されることです。これにより、切粉が刃物にからまず加工面にキズをつけることが少なくなります。また、多面イケールを使用した加工治具を利用することで、1回の起動で複数の加工が可能です。さらに、パレットチェンジャーを組み合わせることで、大量生産が可能な加工ラインを構築できます。

◇門形マシニングセンタのメリット

門形マシニングセンタは、主軸を支える構造が門の形状をしており、大型の製品や部品の加工が可能となります。一般的な門形マシニングセンタでは、幅3500mm、長さ8000mm、高さ2200mmまでの大きさの加工が可能です。また、門型マシニングセンタは主軸が垂直方向に装備されており、立形マシニングセンタと同様に直感的な加工が可能です。

◇5軸マシニングセンタのメリット

5軸マシニングセンタは、加工の工程を短縮できます。1回の加工ワークの取り付けで多面の加工が可能であり、手作業による工程を短縮できるでしょう。また、材料や工具を回転させながら加工できるため、従来の機械では難しかった動きにも対応し、工程を機械が自動的に実施します。他にも、あらゆる方向からの加工が可能となり、工具の変形やブレを抑え、高い精度での加工が可能です。

マシニングセンタのデメリットとは？

マシニングセンタは、メリットだけでなく、デメリットも少なからず存在します。そのため導入前にデメリットについても、考慮する必要があります。

◇プログラムが複雑

マシニングセンタを効果的に利用するには、加工操作や工具パス（経路）を指定する複雑なプログラムを作成する必要があります。これには専門知識と時間が必要であり、加工プログラムの作成には手間と労力がかかります。そのため、マシニングセンタの導入には、プログラム作成に必要なリソースと時間の考慮が必要です。

◇加工状況が見えづらい

マシニングセンタは、加工状況が見えづらいことがデメリットとして挙げられます。一般的な汎用工作機械では、作業者が加工状況を直感的に把握し、必要に応じて調整が可能です。しかし、マシニングセンタでは全体がカバーで覆われており、加工中の状況を確認するのが難しい場合があります。また、自動加工が主流なため、問題が発生しても対応に遅れが生じる可能性があります。

◇深いものは加工できない

マシニングセンタのデメリットとしては、深いものは加工できないという点があります。特に、ワイヤーカットと比較すると、マシニング加工は直接加工を行うため、厚みのあるワークの加工には適していません。加えて、マシニング加工では工具の摩耗が発生しやすく、それが加工精度や効率に影響を与えることもあります。そのため、深い部分や厚みのある部品の加工には、他の加工方法の選択が必要です。

マシニングセンタは、NC工作機械と共に工業製造に不可欠な装置ですが、両者の大きな違いは自動工具交換装置(ATC)の有無にあります。マシニングセンタはATCを搭載し、穴あけやフライス加工など複数の作業を一台で行うことができ、効率的な加工を実現します。一方、NC工作機械は数値制御技術を用いた加工機械であり、マシニングセンタほどの自動化はないものの、加工の精度や効率を向上させます。

立形、横形、門形、または5軸の各タイプのマシニングセンタは、特定の製造ニーズに合わせた特定の利点を提供し、自動車や航空宇宙などの産業で多様で高品質な生産能力を要求するニーズに対応しています。

マシニングセンタの導入によるメリットには、生産性の向上、様々な加工の可能性、人件費およびコストの削減があります。立形、横形、門形、5軸といったさまざまなタイプがあり、各々が特定の加工ニーズに対応します。しかし、プログラムの複雑さや加工状況の把握が難しい点、深い加工の制限などデメリットも存在し、導入前にこれらを十分に検討する必要があります。