多様な産業で活躍するマシニングセンタの種類と用途とは? | マシニングセンタ大解剖
マシニングセンタの基本
多様な産業で活躍するマシニングセンタの種類と用途とは?
公開:2024.03.27 更新:2024.03.28立形マシニングセンタは、そのコンパクトな設計により工場スペースの有効活用が可能で、直感的な操作性と高い視認性を持ち、多岐にわたる加工作業をサポートします。
横形マシニングセンタは、水平配置された主軸による効率的な切り屑排出機能と高精度加工が特徴で、大量生産や自動化システムとの連携に優れています。門形マシニングセンタは、大型材料の精密加工に特化した構造を持ち、広範囲な加工を可能にする高い加工精度が魅力です。
これら各種マシニングセンタは、それぞれの特徴を活かして様々な製造ニーズに応え、業界全体の生産効率と加工品質の向上に貢献しています。
目次
省スペースが特徴の立形マシニングセンタとは
立形マシニングセンタは、省スペースな構造が特徴であり、工場内のスペース効率を最大限に活用できます。また、幅広い加工能力と優れた汎用性を兼ね備えています。
◇特徴と用途
立形マシニングセンタは、地面に対して縦向きに取り付けられた加工機械で、フライス、穴あけ、仕上げ加工など、幅広い加工に使われます。操作感はボール盤や立てフライス盤と似ており、金属部品の加工や電子部品の精密加工など、様々な産業で役立っています。
立形マシニングセンタの特徴は、図面と切削工具の向きが同じで加工内容が分かりやすく、主軸が上下に動く構造となっているため切削工具とワークの距離が把握しやすい点です。また、他のマシニングセンタと比べて省スペースであり、導入しやすい特性もあります。
◇種類
立形マシニングセンタは、主軸の規格サイズによって30番、40番、50番の3つに区分されます。
・30番
小型の専用ツールを使っているため、高速回転や高速送りが可能で、加工時間を短縮できます。ただし、馬力が必要となる重切削には向いていません。
・40番
中型で、シャンクの保持力と重量のバランスが良好で、汎用性が高いです。金型加工や自動車部品の加工に適しています。
・50番
大型でシャンクの保持力が高いため、重切削が得意です。そのため、大型ワークの加工に幅広く使われています。
◇メリットとデメリット
立形マシニングセンタのメリットは、幅広い加工に適しており、フライス加工や穴あけ加工、ねじ加工などが可能であることです。また、設置スペースが少なくて済むため、製品や材料のセッティングが容易です。さらに、立型構造であるため、大きな製品や材料の加工にも適しており、重いものも取り扱えます。
一方、デメリットとしては、立型であるため切削時の切り屑が重力で落ちやすく、定期的な清掃が必要です。また、切り屑が切削部周辺に溜まってしまうため、APC(オートパレットチェンジャー:加工するワークをパレット一緒に交換する装置)との相性が悪く、自動化が難しいという点が挙げられます。
加工精度が高い横形マシニングセンタとは
横形マシニングセンタは、水平方向に主軸が配置され、加工物を水平に切削できます。その特性により、高い加工精度が実現され、多様な産業で活用されています。
◇特徴と用途
主軸が横に出ており、水平方向に加工できるマシニングセンタです。この構造により、切削時の切り屑が効率的に排出され、加工面にキズがつきにくくなります。
4面加工やパレットチェンジャーによる加工効率化が可能で、大量生産に向いています。横形マシニングセンタは、APCを搭載するのに適しており、マシニングセンタの可動率を高められます。
◇種類
横形マシニングセンタもまた、主軸のサイズに応じて30番、40番、50番の3つのタイプに区分されます。
・30番
小型モデルであり、省スペースに配置できます。高速回転や高速送りができるため、加工時間を短縮することが可能です。大量生産に適しており、ライン対応型として利用されています。
・40番
中型モデルであり、金型加工に広く使用されます。中ぐり加工や深穴加工に対応し、大径カッターも使用することが可能です。
・50番
大型モデルであり、鋳鉄などの大型ワークの重切削に適しています。切り屑の排出性に優れており、大型金型の長時間加工も得意としています。
◇メリットとデメリット
横形マシニングセンタのメリットは、多面加工時にインデックステーブルが不要であり、加工物を水平に切削できる点です。手動で加工面を変更する必要がないため、高い加工精度を実現できます。大きなワークの加工にも適しており、切り屑の排出性が優れています。
一方、デメリットとして、加工面の広いワークには向かない点です。また、切削油が届かない可能性があるため、加工時の冷却や潤滑が十分でない場合があります。さらに、機械のコストが高くなることも考えられます。
大型加工に適した門形マシニングセンタとは
門形マシニングセンタは、大型の材料を精密に切削加工することが可能です。また高い加工精度を備えており、幅広い産業で活用されています。
◇特徴と用途
門形マシニングセンタは、コラムが門の形をしているマシニングセンタです。テーブルが門型コラムを通り抜ける構造で、大型かつ精密な加工が可能です。最大で12mの長さ、4mの幅、1mの高さの材料を加工できます。
主に産業設備や航空機部品、金型などの大型かつ精密な製品の加工に使用され、大型製品の加工に特に適しています。また水門設備や鋼構造物など、高い精度が求められる製品の加工に広く用いられています。
◇種類
門形マシニングセンタは、クロスレース固定式、クロスレース移動式、ガントリー式の3種類があります。
・クロスレール固定式
コラムが固定され、主軸がY軸とZ軸をクロスレール上で移動し、テーブルは直線方向に動きます。
・クロスレール移動式
コラムが固定され、主軸がY軸とZ軸を移動し、クロスレールもZ軸方向に移動します。これにより、高剛性と高精度の加工が可能ですが、テーブルの動きは固定式と同様です。
・ガントリー式
テーブルが固定され、コラムがテーブルに沿って移動します。一般的には小型の機種が多く、省スペースで設置が可能です。
◇メリットとデメリット
門形マシニングセンタのメリットは、大型の物を精度高く切削加工できることです。材料のセッティングが容易で、高精度な位置決めができます。また、ATCが可能な主軸のヘッドはアタッチメント式で交換でき、5面加工も可能です。
デメリットは、5面加工によりプログラミングが複雑化し、高度な技術が必要です。また、設備が大きく、コストや設置スペースに制約があることが挙げられます。
生産効率の高い5軸マシニングセンタとは
5軸マシニングセンタは、複雑な形状の加工や多面加工に威力を発揮します。生産性と加工精度が高く、柔軟に加工することが可能です。
◇特徴と用途
5軸マシニングセンタは、3軸に加え、回転・傾斜の2軸を同期させることで、従来の3軸加工に比べて段取りが不要になり、生産性と加工精度が向上します。主な用途として、自動車用金型や半導体部品用金型の精密加工が挙げられます。
また、複雑な形状や多面体の加工も1回の段取りで可能です。これにより、生産ラインの効率化や加工精度の向上が実現し、幅広い産業で利用されています。
◇種類
5軸マシニングセンタには、回転傾斜テーブル型、傾斜ヘッド回転テーブル型、回転傾斜ヘッド型の3タイプがあります。
・回転傾斜テーブル型
テーブルが横移動しないため、設備サイズが比較的小さく、直感的な座標が特長です。回転・傾斜の2軸が大きく動き、360°連続回転運転が可能で、三次元的な加工に適しています。
・傾斜ヘッド回転テーブル型
テーブルが傾斜しないため、重量ワークを安定して加工でき、深物加工にも強いです。横型であり、切り屑の排出にも優れます。
・回転傾斜ヘッド型
テーブルが傾斜しないため、重量ワークでも安定して加工可能です。大型ワークに対応し、縦型であるため、門型マシニングセンタの発展形として多用途に活用されています。
◇メリットとデメリット
5軸マシニングセンタのメリットは、1回の段取りで多面加工が可能であり、高い加工精度があることです。また、段取り時間を短縮でき、段差のある加工でも短いツールを使用できるため、安定した加工が実現します。
一方、デメリットとしては、重切削には向いておらず、コストが高いことが挙げられます。また、5軸加工機は、3軸加工機よりも高価であり、初期設備投資が高額になる傾向があります。
立形マシニングセンタは、狭い工場空間でも最大限に活用できる省スペース設計が魅力です。縦方向に配置された主軸により、フライス加工や穴あけ加工など多岐にわたる作業が可能となり、金属や電子部品の精密加工に優れた性能を発揮します。図面と工具の向きが一致する直観的な操作性や、作業者にとっての視認性の高さも大きな利点です。
横形マシニングセンタは、水平配置の主軸が特徴で、切削時の切り屑排出効率が良く、加工面の傷つきを抑えられます。これにより、高い加工精度を実現し、大量生産環境や4面加工を要する作業に最適です。自動化システム、特にAPCの組み込みにより、作業の効率化が可能になります。
門形マシニングセンタは、その名の通り門のような形状をした構造で、大型の材料を精密に加工できる点が最大の特徴です。大規模な産業設備や航空機部品、大型金型の製作に適しており、高い加工精度と広い加工範囲を実現します。
各形状のマシニングセンタはそれぞれ独自のメリットを持ち、製造現場の様々なニーズに応えるための技術的進化とともに、産業全体の生産性向上と加工精度の向上に寄与しています。
メディア推奨 メーカー6選