DMG森精機の新たな取り組みと予兆保全でマシニングセンタの故障を防ぐ | マシニングセンタ大解剖
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DMG森精機の新たな取り組みと予兆保全でマシニングセンタの故障を防ぐ
公開:2024.07.24 更新:2024.07.25マシニングセンタの進化と自動化技術の向上が進む中で、故障の発生を未然に防ぐ取り組みも重要です。DMG森精機は、この課題に対応するため、予兆保全システム「WALC CARE」を導入しています。WALC CAREは、AIやIoT技術を活用して異常や故障の兆候を早期に検出し、故障が発生する前に適切な対策を行うことを可能にします。
目次
マシニングセンタの故障を未然に防ぐ予兆保全
マシニングセンタの故障を未然に防ぐためには、日々のメンテナンスだけでなく、予兆保全が欠かせません。予兆保全は、機械の異常を早期に検知し、重大な故障を防ぐための手法です。
◇予兆保全とは
予兆保全とは、機械や設備の状態を常時監視し、異常や故障の兆候を早期に検出することによって、故障が発生する前に適切な保全(メンテナンス)を行う手法です。センサーやデータ解析技術を駆使して、機械の異常振動、温度上昇、音の変化などを検知し、これらの兆候に基づいて適切なメンテナンスを行います。
部品の故障によるラインストップのリスクを大幅な低減が期待されます。
◇予兆保全の重要性
機械や設備のメンテナンス手法では、予兆保全と予防保全の違いを理解しておくことが重要です。予兆保全は、機械の運転状態を監視し、異常の兆候が現れた時点でメンテナンスを行う手法です。一方、予防保全は定期的にメンテナンスを実施する手法で、まだ異常が発生していない段階で部品の交換や調整を行います。
このため、予防保全は過剰メンテナンスとなることがあり、コストがかさむ可能性があります。予兆保全は実際のデータに基づいて必要な時にメンテナンスを行うため、コスト効率が高く、ダウンタイムの削減につながります。
故障による影響と予兆保全の難しさ
画像出典:フォトAC
予兆保全には、その実施にあたっての課題も存在します。ここでは、工作機械の故障がもたらす影響と、予兆保全の難しさについて解説します。
◇工作機械の故障がもたらす影響
工作機械の故障は、生産ラインの停止や製品の品質低下を引き起こし、直接的な経済損失につながります。また、故障によるダウンタイムは、納期の遅延や顧客の信頼低下を招くため、企業の競争力に悪影響を及ぼすこともあります。さらに、突発的な故障が発生した際の修理や交換にかかるコストも無視できません。
◇予兆保全の難しさ
予兆保全を効果的に実施するためには、故障予測が不可欠ですが、これにはいくつかの難しさがあります。例えば、AIの技術を使用して自動学習で故障の兆候を感知する場合、AIの予測精度が低下することがあります。
これは、故障の回数自体が少なく、故障データが限られているため、異常の兆候を学習する機会が限られるからです。また、工作機械の構造は複雑で、異常の兆候も機械ごとに異なります。
AIだけでなく、センサー技術やデータ解析、専門家の判断、定期点検なども予兆を感知する手法ですが、これらにもそれぞれの限界があります。これらの要因から、予兆保全は難易度が高く、効果的な運用にはさらなる技術の進展が求められています。
予兆保全に力を入れるDMG森精機の取組み
デジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセスを革新するDX(デジタルトランスフォーメーション)は、近年さまざまな業種の企業で推進されています。以下では、DXと予兆保全の両方を活かしたサービスを提供する「DMG森精機」の取り組みをご紹介します。
◇DMG森精機の取り組み
DMG森精機は、ドイツと日本に拠点を持つ工作機械メーカーです。特にCNC(コンピュータ数値制御)旋盤やフライス盤、マシニングセンターなどの製造を行っています。グローバルに展開しており、航空宇宙、自動車、医療など多様な業界向けに高精度な加工機を提供しています。
同社はDXを推進している企業としても注目されており、2030年までに事業における「自動化・デジタル化・AI」および「脱炭素化」を実現するとしています。これらを実現することで、生産プロセスの効率化を図るだけでなく、顧客の多様なニーズに応えるトータルソリューションを提供することが狙いです。
◇DXを推進するサービス「WALC」
DMG森精機は、工作機械の製造販売企業からトータルソリューション企業への転換を目指しています。このため、顧客のビジネスをデジタルとリアルの両面でサポートする体制を構築しています。その中で注目されているサービスが「WALC CARE(ウォルクケア)」です。
「WALC CARE」は、工作機械の予知保全を行うシステムです。このシステムは、工作機械の各軸の異常を定期的にチェックし、その結果をレポートとして提供します。この診断により、故障を早期に発見し、機械の稼働停止時間を減らすことができます。これにより、予期せぬ故障による生産ラインの停止リスクを大幅に低減することができます。
DMG森精機は、自社のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するだけでなく、新規事業を通じて顧客のDX推進も支援しています。WALC(ウォルク)はその象徴的な存在であり、AI、IoT、クラウドコンピューティングなどの先端技術を活用して製造業のDXを推進するソフトウェアサービスを開発・提供しています。
DXはデジタル技術を活用して全く新しいビジネスプロセスを創出し、売上を伸ばすことを目指すものです。DMG森精機のWALCは、このDXの推進において重要な役割を果たしています。
WALC CAREの仕組みと期待される効果
WALC CAREは、最先端のAIやIoT技術を活用して工作機械の各部位を定期的に監視し、異常を早期に検知する予知保全システムです。このシステムにより、機械のダウンタイムを最小限に抑え、生産効率を向上させることが期待されています。次に、その具体的な仕組みと導入による効果について詳しく解説します。
◇WALC CAREの仕組み
WALC CAREは、工作機械の主軸や送り軸を定期的に診断し、異常をレポートするヘルスモニタリングサービスです。WALC CAREは、簡易診断で得られたデータをWALCクラウドに送信し、分析を通じて異常の予兆を特定します。診断結果は専用のWebアプリで閲覧でき、利用者にとって便利です。
導入は専用キットを既存の機械に取り付けるだけで完了します。このプロセスは1時間以内で済み、設定後は提供されたプログラムを実行することで、機械の状態を簡単にチェックできます。
◇WALC CAREで期待される効果
WALC CAREの導入で特に期待される効果は、生産性の向上と保全業務のデジタル化の促進です。同社が実際に自社の工場内でWALC CAREを導入したケースでは、現場の作業者が機器の異常に気付く5か月前に、ベアリングの異常を検出しています。
このような機器の故障の早期発見は、工作プロセスのダウンタイムの減少に寄与し、生産性の向上が期待できます。また、保全業務のデジタル化の促進により、機械をより長く正常に稼働させることが可能になり、持続可能な社会への貢献にもつながります。
マシニングセンタの故障を未然に防ぐためには、日々のメンテナンスだけでなく、予兆保全が欠かせません。予兆保全とは、機械や設備の状態を常時監視し、異常や故障の兆候を早期に検出し、故障が発生する前に適切な保全を行う手法です。これにより、部品の故障によるラインストップのリスクを大幅に低減できます。
DMG森精機の「WALC CARE」は、この予兆保全を実現するためのシステムです。AIやIoT技術を駆使して工作機械の各軸の異常を定期的にチェックし、その結果をレポートとして提供します。この診断により、故障を早期に発見し、機械のダウンタイムを最小限に抑えることが期待されます。
予兆保全は、実際のデータに基づいて必要な時にメンテナンスを行うため、コスト効率が高く、ダウンタイムの削減に繋がります。DMG森精機は、自社のDX推進だけでなく、新規事業を通じて顧客のDX推進も支援し、製造業の未来を切り開く重要な役割を果たしています。
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