大型マシニングセンタのメリットデメリット！種類による違いを解説 | マシニングセンタ大解剖

大型マシニングセンタは、大型ワークの精密加工を可能にするために特別に設計された機械です。門型、5軸、横形などの種類があり、それぞれ異なる特徴と用途を持っています。

これらの機械は、大型ワークの効率的で高精度な製品を生産する一方、設置スペースの確保や段取りの複雑さ、操作の難しさといった課題も抱えています。導入を検討する際には、具体的なニーズや工場の環境に合わせた慎重な選定が必要です。

大型マシニングセンタの主な種類

大型マシニングセンタとは、一般的にテーブルサイズが2mから3mを超えるような加工機を指します。通常のマシニングセンタでは対応が難しい、大型のワークピース（加工物）の加工を可能にするため、特別に設計されています。このタイプのマシニングセンタは、主に建設機械、航空機部品、大型金型の加工など、精度と規模の両方が求められる現場で使用されます。

◇門型マシニングセンタ

門型マシニングセンタは、大型マシニングセンタの中でも特に広範な用途に対応する加工機です。その特徴は、門の形状をした構造で、固定されたテーブル上を門型のフレームが移動しながら加工を行う点です。

この構造により、非常に高い剛性と安定性が得られ、大型かつ複雑な形状のワークピースを精密に加工できます。また、門型マシニングセンタは複数の軸方向に同時加工が可能であるため、効率的な加工が実現します。特に、航空機の部品や大型構造物の製造において、その性能が発揮される場合が多いです。

◇5軸マシニングセンタ

5軸制御マシニングセンタは、X軸、Y軸、Z軸の基本的な3軸に加えて、主軸の傾斜角度を制御するB軸と、主軸の回転角度を制御するC軸を備えたマシニングセンタです。

「ヘッド型」と呼ばれるタイプでは、テーブルが回転しないため、工具の切り替えやワークのセットアップが少なく、加工時間やコストの削減が可能です。これにより、大型のワークや高精度の加工が求められる場面で優れた性能を発揮します。

もう一方の「ヘッド回転テーブル型」は、横型が基本で、回転軸が360度連続回転可能なため、複雑な形状の加工にも対応できます。5軸制御マシニングセンタは、精度が求められる産業で高い価値を持つ技術です。

◇横形マシニングセンタ

横型マシニングセンタは、主軸が水平方向に向いているマシニングセンタの一種で、主軸に刃物を取り付けて回転させ、ワークの側面から切削加工を行います。その主な強みは、ワークをセットし直さずに多面加工ができ、位置ズレによる精度の低下がないことです。

また、切り屑が切削点に溜まりにくく、安定した切削状態を保てるため、作業が効率的です。主軸が横方向にあるため、広い作業スペースが確保でき、多面加工や無人運転が可能で、大量生産に適しています。特に、50番の主軸を搭載した機種は、大型ワークにも対応可能です。

大型マシニングセンタのメリットは？

画像出典：日経クロステック

大型マシニングセンタは、大型ワークピースの加工に対応するために設計されています。そのため、特定のニーズに応じた独自のメリットがあります。ここでは、代表的なメリットを3つ解説します。

◇大型ワークの加工に適している

大型マシニングセンタは、その名の通り、非常に大きなワークの加工に対応しています。通常のマシニングセンタでは取り扱えないサイズのワークピースも、高い精度で加工できるため、建設機械や航空機部品などの製造現場で不可欠な存在です。

例えば、門型マシニングセンタは広い加工範囲を持ち、大型の板金や構造物の加工が可能です。これにより、従来の加工方法では複数の工程が必要だった作業を、一度のセッティングで完了できます。

◇高い精度が期待できる

大型マシニングセンタは、重厚な構造と高度な制御技術により、非常に高い加工精度を実現します。特に、航空宇宙産業や精密機器の製造では、この精度が製品の品質を大きく左右します。

また、最新の5軸マシニングセンタは、複雑な形状の部品を一度のセッティングで加工できるため、精度を維持したまま効率的な生産が可能です。これにより、コスト削減と生産性向上の両方を実現します。

◇大型ワーク加工に耐えうる高い剛性を持つ

大型マシニングセンタは、剛性の高さも特徴の一つです。この剛性により、加工中の振動を最小限に抑え、安定した切削を可能にします。特に、50番主軸を持つ横形マシニングセンタでは、重いワークピースの加工中でも高い安定性が維持されます。

その結果、加工誤差が少なくなり、複雑な部品や高精度を要求される製品の製造に最適です。この特性は、大型構造物や産業機械の部品製造において特に重視されています。

大型マシニングセンタのデメリット

大型マシニングセンタは多くのメリットを持つ一方で、導入や運用にあたって特有の課題も存在します。これらのデメリットを理解しておくと、導入後のトラブルを未然に防ぎ、より効率的に運用するための準備が可能となります。

◇設置スペースの確保

大型マシニングセンタの導入において、最も大きな課題の一つが設置スペースの確保です。これらの機械は通常のマシニングセンタよりもはるかに大きく、設置には広大な工場スペースが必要です。また、機械本体だけでなく、操作パネルや周辺設備、さらには加工物の搬入出スペースも考慮する必要があります。

特に既存の工場に導入する場合、天井高や床強度が十分でないと設置が難しい場合があります。そのため、導入前には綿密な現場調査と計画が必要です。

◇段取りに時間がかかる

大型マシニングセンタでは、大型ワークピースを加工するため、段取り作業に時間がかかる傾向があります。特に、重量のあるワークピースを正確に固定するには、慎重な位置決めと固定具の選定が求められます。この作業が不十分だと加工精度に影響を与えるだけでなく、安全面でも問題が生じる可能性があります。

また、加工条件やプログラムの設定にも時間がかかることがあります。特に5軸マシニングセンタのような高度な機械では、プログラム作成に高度な専門知識が必要です。そのため、操作スタッフのスキルレベルや教育体制の整備が重要となります。

大型マシニングセンタを提供するメーカー

大型マシニングセンタの導入を検討する際には、信頼できるメーカーの選定が重要です。以下では、代表的なメーカーとその提供する大型マシニングセンタについてご紹介します。

◇シティプラスチック

シティプラスチックは、精密加工を得意とする企業で、特に大型マシニングセンタを用いた加工能力に優れています。同社の設備は、大型のワークピースを高精度で加工できるため、建設機械や航空機部品などの生産現場で高く評価されています。

シティプラスチックの大型マシニングセンタは、幅広い加工サイズと特長を持つ機械です。例えば、OKUMAのMCR-A5Cは、最大ワークサイズがX:2500mm、Y:5000mm、Z:1400mmと非常に広く、最大高さ300から1400mmまでのワークを側面から加工可能な業界最大サイズの5面加工機です。これにより、大型の複雑な部品の加工が効率的に行えます。

一方、OKUMAのMCR-AFは、X:2500mm、Y:2500mm、Z:800mmの加工サイズを誇り、特注の大型吸引機を備えており、薄板材の多数個取り加工を可能にしています。これにより、1000×2000mmの薄板材の加工がスムーズに行え、大量生産にも対応できるマシニングセンタです。

◇コマツNTC

コマツNTCは、大型マシニングセンタの分野で高い評価を得ている日本のメーカーです。同社が提供する製品は、門型マシニングセンタをはじめとする多様なラインアップを誇り、航空宇宙産業や建設機械の製造で活用されています。

コマツNTCの、新型立形大型加工機「KV420L」は、電気自動車（EV）で使用されるギガキャスト製のアルミニウム（Al）合金部品の加工に対応しています。「KV420L」は、前後（Y軸）・左右（X軸）・上下（Z軸）に動く主軸を左右に2つ備えており、X軸で回転するチルトテーブルがY軸にも動く設計です。

この設計により、大物部品をワンチャックで6面から高速で加工できるようになり、スペースを効率よく使いながらも高精度な加工が可能です。

◇芝浦機械

芝浦機械は、重工業分野で幅広い製品を提供している老舗メーカーです。同社が展開する大型マシニングセンタは、特に高剛性と高精度に優れており、大型構造物の加工に適しています。

芝浦機械の門型マシニングセンタシリーズは、独自の技術を駆使した高い加工能力が特徴で、国内外の多くの製造現場で採用されています。また、ユーザーのニーズに応じたカスタマイズが可能で、さまざまな業界に対応した製品が提供されています。

大型マシニングセンタは、主に大型ワークピースの精密加工を行うために設計された加工機です。2mから3mを超えるテーブルサイズを持つこれらの機械は、建設機械、航空機部品、大型金型の製造に不可欠です。

門型マシニングセンタは高い剛性と安定性を誇り、複雑な形状のワークピースの加工に最適です。5軸制御マシニングセンタは、複雑な形状のワークピースを効率的に加工でき、ヘッド型とヘッド回転テーブル型があります。

横形マシニングセンタは、多面加工に向いており、安定した切削が可能です。大型マシニングセンタは、その特性から高精度と高剛性を実現し、設置スペースの確保や段取り作業の時間が課題となるものの、シティプラスチック、コマツNTC、芝浦機械などのメーカーが提供する多様な製品が市場に出ています。