長尺加工の難しさとは?長尺加工に適したマシニングセンタを事例とともに紹介 | マシニングセンタ大解剖
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長尺加工の難しさとは?長尺加工に適したマシニングセンタを事例とともに紹介
公開:2024.09.26 更新:2024.09.26長尺加工は、長い材料を扱うため、歪みや振動が発生しやすく、加工中の精度維持が難しい点が大きな課題です。特に、航空機や建築資材などの精度が求められる長尺材の加工では、一般的なマシニングセンタでは対応が困難な場合があります。
そのため、長尺加工に特化したマシニングセンタの導入が重要です。このコラムでは、長尺加工における難しさと、それを解決するための専用マシニングセンタの特徴について、具体的な導入事例を交えて紹介します。
目次
長尺マシニングセンタと一般的なマシニングセンタとの違い
長尺マシニングセンタと一般的なマシニングセンタには、加工対象や機能面でいくつかの大きな違いがあります。一般的なマシニングセンタは標準サイズの部品加工に適していますが、長尺マシニングセンタは特に6メートル以上の長尺材を効率的に加工できるように設計されています。
◇長尺マシニングセンタとは
長尺マシニングセンタは、主に長尺材を効率的に加工するために設計された機械です。一般的な工作機械では対応が難しい2m~10m以上の材料を扱うことができ、特に穴あけ、タップ、フライス加工など多様な加工に対応しています。
このような長尺材は、航空機の構造部材や建築資材などで多用されるため、製品の品質と精度が求められる場面で欠かせない機械です。また、長尺マシニングセンタは、通常のマシニングセンタに比べてストロークが非常に長く、複数の工程を一度に処理できることが強みです。
加工材の長さに応じてクランプシステムが整っており、ワークを安定して固定することで高精度の加工が可能です。さらに、操作性の向上を目指した対話型プログラムも搭載されており、複雑な操作を簡単に行うことができます。
◇一般的なマシニングセンタとの違い
一般的なマシニングセンタは、比較的短いワークを効率的に加工するための機械です。通常、X軸ストロークが300~700mm程度の材料に適しています。一方で、長尺マシニングセンタはX軸が2m~10m以上と大幅に異なり、長尺材の加工に特化しています。
この違いにより、取り扱う製品のサイズや用途が大きく異なるのが特徴です。加工方式にも差があります。一般的なマシニングセンタでは、ヘッドが固定されてベッドが移動しながら加工を行いますが、長尺マシニングセンタではヘッドが移動し、ワークは固定されたままで加工が行われます。この方式により、長尺材の取り扱いが容易になり、加工の精度が向上します。
また、ツール交換の際も、長尺マシニングセンタではヘッドの位置に関わらず迅速に行うことができ、作業の効率化に繋がります。さらに、価格面でも違いがあります。長尺マシニングセンタは、ストロークの長さに応じてコストが決まるため、同等のストロークを持つ一般的なマシニングセンタよりもコストパフォーマンスに優れています。
長尺加工や大物加工の難しさと適した機器
画像出典:フォトAC
長尺加工や大物加工は、通常の部品加工に比べて高度な技術と専用の機器が求められる作業です。特に、長さがある材料や重量のある大きな部品は、加工中に安定性を保つことが難しく、歪みや精度の低下が発生しやすいという課題があります。
◇長尺加工や大物加工の難しさ
長尺加工や大物加工の難しさは、主にワークの大きさや重量によるものです。長尺材は特にしなりやすく、加工中に歪みや反りが発生しやすいため、高精度の加工を行うには特別な工夫が必要です。
さらに、材料が長くなるほど、加工中に振動が生じやすくなり、工具のビビリや加工精度の低下が問題となります。これらの課題に対応するためには、ワークの適切な固定と、振動を最小限に抑える加工方法が求められます。
また、大物加工の場合、ワークの大きさや重量が段取り作業を複雑にし、効率的な加工が難しくなります。重い部品を正確にセットし、加工するためには、専門的な装置と技術が必要です。特に、加工精度を高めるためには、加工前後の歪み取り工程が重要であり、これが欠けると、完成品に精度の不具合が生じることがあります。
このように、長尺加工や大物加工は、高い技術と慎重な計画が必要となる非常に繊細な作業です。
◇長尺加工や大物加工に適したマシニングセンタ
通常のマシニングセンタでは、ストロークや重量制限のため、長尺材や大物の加工が困難です。そのため、長尺加工に対応できる専用のマシニングセンタを使用することが推奨されます。
例えば、長尺部品に対応するマシニングセンタは、X軸のストロークが非常に長く、ワークを固定したまま一度に複数の加工を行うことができ、段取りを効率化できます。さらに、振動を抑えるために、ヘッドが移動する形式のマシニングセンタが理想的です。
このタイプのマシンでは、ワークは固定されたまま、加工ヘッドが移動して加工を行うため、長尺材の歪みや振動を最小限に抑えることができます。また、ツール交換も効率的で、どの位置にあっても迅速に行えるため、加工のスピードと精度を両立させることが可能です。
これに加え、段取り作業の簡便さも大きな利点です。通常のマシニングセンタに比べ、長尺マシニングセンタはワークをセットする前部が開放されているため、長尺材を容易に固定することができます。
また、左右のカバーも取り外し可能なため、セット時に傷つけるリスクが減少します。このように、適したマシニングセンタを使用することで、長尺加工や大物加工の課題を効率的に克服し、高精度かつスムーズな生産が可能となります。
長尺加工機のパイオニアであるフジ産業
フジ産業の長尺マシニングセンタは、作業効率と操作性を兼ね備えた高性能な加工機として、多くの業界で重宝されています。同社のマシニングセンタは製造業における人手不足や後継者問題にも対応できる製品であり、企業の生産性向上に貢献しています。
◇フジ産業とは
フジ産業は、1985年に創業し、長尺加工機や各種専用機の製造販売を行う、加工機のパイオニアとして知られています。同社は、静岡県静岡市に本社を構え、これまでに累計2,000台以上のオーダーメイド長尺加工機を提供してきました。
主に、木材や鉄鋼、プラスチックなどの加工業界向けに、多様な加工機をカスタマイズして製作しています。特に、トラックや鉄道、建築用アルミサッシなど、長尺材を扱う業界で信頼されています。
フジ産業の強みは、顧客のニーズに応じて完全カスタマイズされた長尺加工機を提供し、その柔軟性と対応力が高く評価されている点です。
◇作業しやすいオーダーメイドマシニングセンタ
フジ産業の長尺加工機は、作業効率を最大限に高めるためにオーダーメイドで設計されています。特に、後継者不足や職人の高齢化が進む中、フジ産業の加工機は、技術の浅い職人でも短期間で習得できる操作性を持つことが特徴です。
簡単な対話ソフト「FS-MAC」を標準搭載しているため、複雑なプログラミングの知識がなくても、誰でもすぐに操作可能です。また、エアークランプバイスや自動工具長測定機能が備わっており、ワークを固定する作業も簡単でスムーズに行えます。
これにより、効率的な加工が可能となり、作業時間を大幅に短縮できることが多くの企業から支持されています。
◇フジ産業の長尺マシニングセンタ
フジ産業の長尺マシニングセンタは、X軸ストロークが2.0mから10m以上に対応しており、特に長尺材の加工に特化しています。アルミや鉄鋼、ステンレスなどの様々な材質を加工できるため、幅広い業界で利用されています。
さらに、パイプやアングル、H鋼など複雑な形状のワークにも対応可能であり、オーダーメイドで作られた加工機は最大20m以上の長さを持つものまで製作実績があります。
また、エアークランプバイスや原点ストッパーといった標準機能に加え、操作性も優れており、導入したその日から作業が開始できる点も大きな強みです。
長尺マシニングセンタ導入事例を紹介
画像出典:フジ産業
フジ産業の長尺マシニングセンタを導入した2つの事例を紹介します。これらの事例では、長尺材の加工における効率向上や精度の改善が実現され、各企業が抱えていた加工の課題を解決しました。具体的な導入背景や成果について、詳しく見ていきます。
◇長尺マシニングセンタ導入で事業拡大
株式会社工和製作所では、事業拡大を目指し、フジ産業製の長尺マシニングセンタを導入しました。同社はバスシェルターや手摺りといった製品を製造しており、従来は最大2mまでの加工しか対応できなかったため、長尺の部材には対応できませんでした。
しかし、事業の成長に伴い、6mまでの部材を加工する必要が生じたため、フジ産業のFB-5000-12ATCを導入しました。この機種は、アルミや鉄鋼材などの長尺加工を得意とし、多機能な操作盤により複雑な加工が一台で可能です。
導入後、工和製作所では6mの長尺材の加工が可能になり、これまで受けられなかった新たな案件を積極的に受注することができました。また、6mもの長尺材を収納するための新工場も設立し、生産体制がさらに強化されました。
この長尺マシニングセンタの導入は、事業拡大を支える大きな一歩となり、同社の成長に大きく貢献しました。
◇精度の向上と均一化に成功
株式会社フダイでは、カーテンウォール製作のために、フジ産業製の長尺マシニングセンタを導入しました。それまで使用していたボール盤では、精度にばらつきがあり、特に長尺材の加工で品質が安定しないという課題を抱えていました。
そこで、同社はドリル加工や切断、フライス加工が1台で行えるFB-5000-8ATC-Cを選びました。このマシニングセンタは、対話型操作メニューを備えており、操作の習得が容易であるため、作業効率が格段に向上しました。
導入後、同社では加工時間が半減し、生産効率が大幅に改善しました。また、長尺材の加工精度が大幅に向上し、製品の均一化が図れました。これにより、品質管理が厳しい顧客からの信頼も高まり、新たな取引先の獲得にもつながりました。
長尺マシニングセンタは、通常のマシニングセンタと比べて特に長尺材の加工に特化しており、6m以上の長さを持つワークを高精度に加工できる機械です。
一般的なマシニングセンタは標準サイズの部品に適している一方で、長尺マシニングセンタは長いストロークと優れたクランプシステムを備えており、加工中の歪みや振動を抑えることができます。また、ヘッドが移動して加工を行うため、作業効率が向上し、複数の工程を一度に処理することが可能です。
このような特徴により、航空機部品や建築資材など、精度と安定性が求められる場面で幅広く活用されています。導入事例として、工和製作所では6mの長尺材の加工に対応し、事業拡大を果たしました。また、株式会社フダイでは加工精度の均一化に成功し、新たな取引先を獲得しました。
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