高速・高密度加工を実現するシャンクの30番とは?導入事例を紹介 | マシニングセンタ大解剖
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高速・高密度加工を実現するシャンクの30番とは?導入事例を紹介
公開:2024.07.25 更新:2024.07.25マシニングセンタの効率を最大限に引き出すためには、適切なシャンクの選定が欠かせません。特に30番シャンクは、小型マシニングセンタにおいて高速・高密度加工を実現するための重要な要素です。こちらではツーリングやシャンクに関する基本知識や、シャンクの番号による違いについて解説します。
目次
工作機械の精度を向上させるツーリングとは?
マシニングセンタは、さまざまな金属や材料を精密に加工するための重要な機械です。その性能を最大限に引き出すためには、ツーリングやシャンクの選定が非常に重要になります。
◇ツーリングの基本知識
ツーリングとは、マシニングセンタなどの工作機械において、切削工具(ドリルやフライスなど)を固定するための器具の総称です。具体的には、工具ホルダー、シャンク、コレットチャックなどが含まれます。これらのツーリング部品は、工具を主軸にしっかりと取り付け、加工中の安定性を保つために設計されています。
◇工作機械の精度を左右するシャンク
ツーリングにおけるシャンクは、工具ホルダーを固定する器具で、切削工具の「柄」や「持ち手」の部分を指します。この部分が工具を安定して保持する役割を果たし、加工中の精度を確保します。シャンクの設計や材質、剛性が加工精度に大きく影響を与えるため、高剛性のシャンクを選ぶことが重要です。
代表的なシャンクの規格として、BTシャンクやHSKシャンク、NTシャンクがあります。BTシャンクはテーパ面積が大きく、工具を強固に保持することができます。一方、HSKシャンクは中空構造で工具の振れを最小限に抑えることができ、加工精度を高めることが可能です。
また、NTシャンクは汎用工作機械でよく使われる規格です。これらのシャンク規格は基本的に互換性がないため、選定時には注意が必要です。
◇BTシャンクの構造と特長
BTシャンクは「ボトルグリップ・テーパ」を略した規格名称で、主にマシニングセンタで使用されるツーリングの一種です。このシャンクは、先端がテーパー状になっている円筒形状で、工具をしっかりと固定できるのが特徴です。
BTシャンクの構造は、シャンク後端に突起のついたプルスタッドボルトを持ち、これが工具を強固に主軸へ引き込み保持する仕組みになっています。この突起を引っ張ることで、工具が確実に固定され、安定した加工が可能となります。主軸との接触箇所は7/24テーパと呼ばれ、軸方向に24mm進むごとに直径が7mm小さくなるテーパ形状をしています。この形状により、工具の固定が非常に安定します。
BTシャンクは標準化されているため、多くのマシニングセンタで使用することができ、互換性が高いのが大きなメリットです。これにより、フレキシブルなツーリング構成が可能となり、さまざまな加工ニーズに対応できます。ボトルグリップ部分はATC(自動工具交換装置)で使用することを考慮して設計されており、工具の自動交換がスムーズに行えるようになっています。
シャンクの番手とは?30番、40番の違い
シャンクの番手は、シャンクのサイズや規格を示す指標であり、番手の数値が大きくなるほどシャンクの直径も大きくなります。一般的に使用されるシャンクの番手には、30番、40番、50番などがあり、加工する材料や精度の要求に応じて選ばれます。
◇高速・高密度加工が可能な30番
30番シャンクは、小型マシニングセンタにおいて特に高速・高密度な加工が求められる場合に使用されます。30番シャンクの最大の特徴は、その軽量さとコンパクトさです。この特性により、主軸の回転速度を非常に高く設定でき、高速加工が可能になります。また、工具の交換も迅速に行えるため、サイクルタイムの短縮にも寄与します。
◇重金属切削も可能な40番
40番シャンクは、より大きなマシニングセンタで使用されることが多く、重金属切削にも対応できる強力なツーリングシステムです。40番シャンクは、その大きさと重量により、高い剛性と安定性を提供します。このため、硬度の高い金属や大きな部品の加工において、優れた性能を発揮します。
BT30番主軸と自社開発NC搭載SPEEDIO
画像出典:ブラザー
SPEEDIOシリーズは、ブラザー工業株式会社が製造・販売する高性能マシニングセンタのブランドです。SPEEDIOシリーズのマシニングセンタは、主にBT30番シャンクで展開されています。
◇ブラザーのSPEEDIO
SPEEDIOシリーズのマシニングセンタの大きな特徴は、主軸にBT30番を採用している点と、自社開発のNC(数値制御)システムを搭載している点です。BT30番シャンクは、その軽量でコンパクトな設計により、高速回転が可能で、精密で効率的な加工を実現しています。
また、SPEEDIOシリーズに搭載されている自社開発のNCシステムは、高速かつ正確なデータ処理能力を持ち、複雑な加工プログラムも迅速に実行できます。これにより、形状が入り組んだ部品でもスムーズに加工でき、精密な寸法公差を要求される製品の製造にも対応可能です。
◇省エネとアルミ部品需要に応える
SPEEDIOシリーズは、高効率のモーターや省エネルギー型の制御技術を採用することで、加工中のエネルギー消費を抑えつつ、高い生産性を維持しています。さらに、製造コストの削減と環境負荷の低減も図られ、持続可能な製造プロセスを実現しています。
このシリーズは、アルミ部品の加工に特化した機能を備えていることもポイントで、アルミニウムの特性に適した加工が可能です。アルミニウムの効率的な加工の実現は、自動車部品、航空機部品、電子機器など、多岐にわたる製品の製造で重宝されています。
ブラザーのマシニングセンタで実現した効率化
画像出典:ブラザー
ブラザーのマシニングセンタを導入して大幅な生産性の向上を実現した事例として、株式会社M・Kテックが挙げられます。
◇工作機械導入の背景
株式会社M・Kテックは、これまで鉄加工の分野で40番マシンを使用していましたが、加工スピードが遅いという課題に直面していました。このため、生産ラインの効率が低下し、納期の短縮が求められるなかで競争力を維持するのが難しくなっていました。
この課題を克服するため、M・Kテックはブラザーの30番マシン「F600X1」を導入することを決定しました。このマシンは、従来の40番マシンと同様の加工内容を1.5倍の速さでこなせるため、生産性の大幅な向上を実現しています。
◇現場から好評のSPEEDIOシリーズ
SPEEDIOシリーズは、株式会社M・Kテックの現場作業員からも好評を得ています。使いやすさが一段と向上しており、直感的な操作が可能になっています。また、メンテナンスの間隔を設定できるため、定期的なメンテナンスが容易になり、機械の故障を抑えることができる点も大きなメリットと感じているそうです。
特にF600X1モデルは、切粉の排出がスムーズで掃除がしやすいと評価されています。また、40番並みのパワーと30番のスピードを併せ持つことで、会社の加工効率が大幅に向上したと述べています。さらに、工具交換のスピードが速いため、生産量も確実にアップしているとのことです。
このように、SPEEDIOシリーズは操作性の向上やメンテナンスの容易さ、パワーとスピードのバランスにより、現場作業員から高い評価を得ています。これらの特長が、作業効率の向上と生産性のアップに貢献しているのです。
マシニングセンタの精度を向上させるためには、ツーリングやシャンクの選定が重要です。ツーリングとは、工作機械において切削工具を固定する器具の総称で、工具ホルダーやシャンク、コレットチャックなどが含まれます。
特にシャンクは、工具の「柄」や「持ち手」の部分で、加工中の精度を確保します。代表的なシャンクの規格には、BTシャンクやHSKシャンク、NTシャンクがあります。BTシャンクは「ボトルグリップ・テーパ」の略で、主にマシニングセンタで使用されるツーリングの一種です。その構造により工具をしっかりと固定し、安定した加工が可能です。
ブラザーのSPEEDIOシリーズは、BT30番シャンクを採用し、自社開発のNCシステムを搭載しています。使いやすさとメンテナンスの容易さが現場で高く評価されており、操作性とパワー、スピードのバランスが取れた優れたマシニングセンタです。株式会社M・Kテックでは、このシリーズの導入により加工効率が大幅に向上し、生産量もアップしています。
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